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野良猫に手作りの餌を与え続けた女性、その「善意」が招いた悲劇

先日、ハムスターを青く染めるという行為を撮影した動画が公開された。すると、「動物虐待ではないか」と非難が殺到する事態に。この件を知った読者から、当サイトに情報が寄せられた。「動物虐待というと、悪意のある残酷な出来事ばかりが注目されますが、善意による行動が虐待につながる場合もあることを知ってほしいです」という。

 


(1)問題の発覚
情報提供者は、東京都内を中心に活動する動物愛護団体の会員だ。江戸川区の住民から、その団体に相談があったという。相談者は近隣住民と協力して、飼い主のいない野良猫たちを「地域猫」として世話している。その猫たちの一部に皮膚の異常が確認されており、ある女性が与えている餌が原因ではないかと疑われた。

その女性は、手作りした餌をいつも持参していた。餌といっても、キャットフードではない。デミグラスソースをかけたハンバーグ(玉ねぎは不使用)、塩を大量に振りかけた焼き魚など、味付けの濃いものばかりだ。食事の残り物か、猫のために余分に作ったものなのだろう。人間の食べ物は、猫の健康を害することもある。

女性が餌を与えていた猫のうちの1匹は、首の周辺を中心に毛が抜け落ち、皮膚がただれていた。食生活が原因で皮膚に異常が発生し、かゆい箇所を爪で掻き毟ったことで、さらに状態が悪化したようだ。そのことを女性に伝えたが、「でも、猫ちゃんは私の持ってきたものを喜んで食べてるでしょ」と聞く耳を持たなかったという。


(2)救助作戦
皮膚の状態が日を追うごとに悪化してきたため、情報提供者はその猫を捕獲して治療することを決意した。またたびが好物だと聞いていたので、それを与えて猫が夢中になっているところを背後から抱きかかえて捕獲。動物病院に猫を連れていくと、膿がひどい箇所を中心に手術をすることになった。退院後は、飲み薬と塗り薬で治療した。

 

 

治療期間中に撮影した画像。

 

以降、この猫は情報提供者が引き取り、自宅で飼育している。味に敏感で、飲み薬を餌に混ぜると食べないので、強引に口を開けて薬を飲ませなければならなかったという。情報提供者は「かわいそう」と思いつつ、治療のためと自分に言い聞かせて、猫に薬を与え続けた。やがて皮膚の状態は改善し、毛が抜け落ちていた箇所はほぼ再生した。

 


(3)保健所の見解
江戸川区では、地域猫の管理を行うボランティア団体への支援事業を展開している。支援対象となる条件や餌の与え方の参考事例等については、区のホームページに情報が掲載されている。事業を管轄する保健所生活衛生課によると、どのような餌を与えるかという問題は、活動に関わる人々が当事者間で話し合って解決してほしいという。

一般的には、猫の健康を害さない餌を与えるというのが「常識」だ。今回の件では、その常識が共有されていなかった。とはいえ、本件のような問題は条例や法律で規制の対象となっていない。それゆえ、暴力行為や毒物を与えるといった違法性が問われる案件とは性質が異なり、公的機関による介入や指導は難しいと、保健所の担当者は述べた。


(4)まとめ
「たとえ猫が喜んで食べても、その餌が原因で体の具合が悪くなったら、それは虐待です」と情報提供者は主張する。本当に猫のことを大切に思い、健康に長生きしてほしいと考えるのであれば、適切な餌を与えることが重要だという。近隣住民が共同で地域猫の世話をする場合、このような認識を事前に共有しておくことが必要なのではないだろうか。

 

高橋 

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