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エスカレーターの「片側空け」は正しいのか?事故の危険を経験した人の主張

エスカレーターの「片側空け」は、今や全国各地で定着している習慣だ。「エスカレーターでの歩行は危険です」と、利用者への自粛を呼びかけていることもあるが、実際には守られていない。むしろ、人々は率先して片側空けを実践して、エスカレーターを歩く人々に配慮している。

このたび、エスカレーターでの事故の危険を経験した読者(以下、「A氏」と記載)から、情報が寄せられた。東京メトロの四ツ谷駅には、非常に長く急角度のエスカレーターがある。A氏は今夏、このエスカレーターを利用した際に、事故に遭いそうになったという。それまでは、A氏自身も片側空けが習慣になっていたそうだ。

 

 

その日、A氏は片側空けをしてエスカレーターに乗っていた。すると、後方からかなりの速度でエスカレーターを駆け上がってくる男性がいたという。その男性がA氏の横を通り過ぎた際、男性の肩にかかっていた大きなバッグが、A氏が右手に持っていた荷物に接触。男性はそのまま駆け上がっていったが、A氏はバランスを崩した。

A氏は幸いにも左手には何も持っていなかったため、慌てて手すりをつかんだ。「もし間に合わなかったら、私はきっと下まで落ちてました」。A氏が落下寸前の危険に遭遇したのは、長いエスカレーターのかなり上の方だった。そこから落下していたら、大事故につながっていたかもしれないと、A氏は言う。この経験以来、事故の危険が発生する確率を増幅させる片側空けは禁止すべきだと、A氏は考えるようになった。

 

 

このエスカレーターは長いため、片側空けをしていても右側を歩いていく人の数は限られるという。このたび記者が現地を訪れた時は、夕方の混雑する時間帯だったため、右側を歩行する人も見られたが、それほど多くはなかった。一方、片側空けに協力する人々の長蛇の列が、エスカレーターの下まで続いていた。

 

 

 

 

当サイトでは、エスカレーターの片側空けの問題に取り組んでいる、一般社団法人日本エレベーター協会に尋ねた。担当者によると、エスカレーターの構造については法令によって定められた基準があるが、片側空けはマナーの問題であるため、国が利用者に対して規制等を行うことはできないという。これまで協会では、エスカレーターでのマナー向上と安全な利用を呼びかけてきた。

片側空けは、必ずしもルールになっていないとしても、世界的に見られる現象になっているそうだ。一方、片側空けによって輸送効率が落ちるとの指摘もあると、担当者は述べる。ロンドンの地下鉄のエスカレーターで片側空けをやめるという実験では、輸送効率が約3割上がるという結果が出たそうだ。エスカレーターを待つ人々の長蛇の列も、片側空けをやめることで改善が期待できるという。

実を言うと、記者自身も普段は意識することなく片側空けをしてきた一人だ。急いでいる時に、エスカレーターを歩いたこともある。また、事故の危険について、改めて考えてみたことがなかったのも事実だ。だが、少なくともエスカレーターを駆け上がるという行為に関しては、各自がその危険を自覚する必要があるのではないかと、今回の取材を通じて実感した。そうした自覚があれば、危険行為を自主的にやめることもできるのではないだろうか。

 

高橋 

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