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店員の接客、風邪で咳が止まらなくても「マスクの着用は禁止」?その実態は

風邪が流行っているこの時期、接客を担当する仕事をしている人々にとって、つらい経験もあるかもしれない。一方、風邪をひいている店員による接客を、客はどのように受け止めているのだろうか。有楽町(東京都千代田区)で買い物をした際に、風邪をひいている店員に接客を担当されて不快な思いをしたとの情報が、このたび読者から寄せられた。

 


情報提供者の経験
情報提供者によると、自身を担当してくれた店員は、咳が止まらない状態だったという。話している最中も、絶えず咳き込んでいた。店員は咳をする時に口を手で押さえていたとはいえ、このような接客は決して心地よいとは言えなかった。だが、その場で店員にそのことを告げるのはためらわれたという。

後日、店に電話をかけて、フロアの責任者と話した。責任者からは、丁重な謝罪の言葉があったそうだ。「咳をしている店員さんは、マスクをして接客するわけにはいかないのですか」と尋ねると、「マスクを着けたままでのお客様への対応は失礼に当たりますので、申しわけありませんができません」と責任者は答えた。

 

 

「マスクをして接客するとは失礼だ」という意見が、過去に複数の客から店に寄せられたという事情があるとのこと。また、「咳のひどい者は店頭ではなくバックヤードで勤務させるなど、こちらの配慮が足りなかったと思います」と責任者は述べた。「今後は、朝礼の時に咳のひどい店員がいないか、しっかり確認します」との言葉もあったという。


現地の様子
以上のような実態は他の店にも当てはまるのか調べてほしいというのが、当サイトへの依頼だった。そこで、実際に現地へ向かった。最初に訪れたのは、情報提供者が利用した店だ。記者が確認した限りでは、軽く咳込んでいる程度の店員はいたが、重症と思われるような店員は見当たらなかった。

 

 

有楽町の駅前には、デパートや複合商業施設がいくつもある。上記以外の店も確認したところ、一部に咳をしている店員を確認できた。だが、マスクを着用している店員は皆無だった。かなり重症と思われる店員がいたので、商品について尋ねつつ、「咳は大丈夫ですか」と問うと、「申し訳ありません」と店員は繰り返した。

「咳が止まらない時も、マスクは使えないのですか」との問いに対しては、「マスクの使用はお客様に失礼ですので、禁止されております」という答えが返ってきた。情報提供者の話に出てきた店と同じ理由で、この店でもマスクの着用が禁止されていたのだ。そのフロアには咳き込んでいる店員が他にも2名おり、同僚たちの間で風邪が流行っている様子だった。


業界団体の話
続いて、各地のデパートが加盟する業界団体である、日本百貨店協会に話を聞いた。接客時にマスクを着用しないということは、業界では「常識的な対応」と考えられているとのこと。業界としての意見や判断を統一したり、その実施状況に関する実態の把握や情報交換をしたりといったことは行っていないという。

「お客様にご不快を与えないように、そういった場合(店員の咳が止まらない場合)は店頭に立たないなど、各社が内部で決めていることはあるのではないかと思います」と担当者は推測する。担当者自身も、マスクを着用した状態で店頭に立っている店員を見たことは、あまりないそうだ。

しかし、マスクの着用禁止が業界の「標準」として定められたり、明文化されたりしているわけではないという。ただし、例外は食品などの売り場であると、担当者は説明する。この場合は、衛生管理という目的でマスクの着用が望ましいとされている。特に量り売りなどを担当する店員は、マスクだけでなく手袋の着用も一般的であるという。

 


まとめ
以上のように、風邪をひいていて咳が止まらなくても、マスクの着用は望ましくないという判断が、業界では一般化しているようだ。この点について情報提供者は、「少なくとも自分としては、体調の悪い店員さんはマスクをしてくれていた方が、衛生面に配慮しているように感じて印象もいいです」と述べる。

だが、「マスクを着用しての接客は失礼だ」と考える人々からの苦情があるのだとすれば、現状を改めることは容易ではないだろう。逆に情報提供者のように、「客の前で咳が止まらず、相手に風邪をうつしてしまう可能性」の方が失礼だと考える人もいるかもしれない。結局は、咳が止まらない時は店頭での接客を控えるというのが最善の策なのだろうか。

 

高橋 

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