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本当に重度の精神障害か?温泉巡りを元気に有料ライブ配信する年金受給者

ニコニコ生放送などの配信者には、重度の精神障害であると認定されて、障害年金を受給している人々がいる。そうした人々の活動に対して、「まるで健常者と変わりないかのように元気に配信しており、本当に重度の障害なのだろうか」と疑問視する声が、以前から当サイトに定期的に寄せられてきた。

「フグちゃん」と名乗る男性配信者に関する情報は、特に多く寄せられる。昨年の記事では、精神障害2級である彼が、ふわっちでの配信にて30万円近くも荒稼ぎしたという件を扱った。精神障害2級は、「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と厚生労働省によって定義されている。

フグちゃんは現在も定期的に配信しており、最近では各地の温泉巡りを企画。その様子を配信するとともに、番組の一部は有料会員限定での公開とするなど、精力的に活動している。温泉や各地でのイベント等に出かける際には自ら車を運転するが、統合失調症の彼が運転することに安全上の問題はないのかと問う声も上がっている。

 

フグちゃんは、福島県会津若松市に在住であると公言している。当サイトでは、昨年にも話を聞いた、県の障がい福祉課に再度連絡を取った。担当者によると、彼の配信活動については知っているが、その内容を随時確認しているわけではないという。精神障害2級という判定が疑問視されていることも、把握している様子だった。

配信中の元気な様子は「日常生活が著しい制限を受ける」という精神障害2級の定義に合致するのかと問うと、等級の判定はあくまでも医師の診断書に基づいてなされるものであると、担当者は説明した。「薬で症状をコントロールするなどによって日常生活を問題なく送れることもあるので、(等級の判定が)一概に『不正』とは言えません」という。

統合失調症者の車の運転に関しても、主治医と相談して決めるべき事柄であるため、一律に禁止できるわけではないとのことだ。「むしろ、一律に禁止したら人権侵害になります」と担当者は述べた。

 

もう一つ尋ねたのは、病状が大きく変化した場合の対応だ。現在の制度では、精神障害者保健福祉手帳の申請は2年ごとであり、そのつど等級の判定が行われる。もし2年の間に病状が著しく改善しても、期間中の等級は変わらないのか。担当者曰く、医師の診断書を添えて、当人から等級変更の申し出があった場合のみ、変更が認められるという。

続いて、会津若松市の障がい者支援課に本件を尋ねた。担当者はフグちゃんのことをよく知らないそうだが、当方の質問への回答は県とほぼ同じ内容だった。県と市の担当者には、当サイトに様々な情報が定期的に寄せられていることや、配信内容及び疑問視されている点などを伝えた。当サイトからの情報に基づいて、最近の状況を確認するとのことだった。

等級の判定について疑義が提起された場合、再調査は行われないのか、また、その必要はないのか。当サイトでは、日本年金機構にそのように尋ねた。すると、「そうした質問については各地域の年金事務所で回答することになっているので、そちらへ問い合わせてください」という。そして、会津若松年金事務所を紹介された。

 

会津若松年金事務所の担当者は、フグちゃんの件を全く把握していなかった。「ネットの配信者に関わる問題を担当した経験がない」と困惑している様子だったので、騒動の概要や配信の閲覧方法等を説明した。等級の判定が疑わしい場合に、その再調査の実施はあり得るそうだ。本件については、詳細を調べた上で対応を検討するという。

ちなみに、「元気なのだから、就職して働くべきだ」とフグちゃんを批判する声が寄せられることもあるが、企業等に就職するか配信活動で生計を立てるかは、本人次第だろう。障害年金の受給について疑問視されていることとその背景及び主要な論点、そして、そうした現状を公的機関がどう捉えているのかということを伝えるのが、本記事の趣旨である。



[追記:2018年6月4日]

本記事掲載後、フグちゃんが配信活動を行うチャンネルを運営する企業から連絡があった。先方の主張や異議について確認が必要であると考え、その時点で本記事を一旦非公開設定にした。その後、対応を検討した結果、記事の客観性の向上にもつながるとの判断から、同社及びフグちゃんのコメントを以下の通り追記し、記事を再掲載することになった。

同社によると、チャンネルの開設に際して、 フグちゃんには主治医からの診断書を提出してもらい、彼の病状を確認済みであるという。したがって、配信を行うに当たっての、 手続き上の不備や問題は存在しないというのが、同社の見解だ。温泉等での配信活動はあくまでもリハビリの一環であり、 現状では車を運転しても危険ではないことも確認できているという。また、フグちゃんは精神障害に加えて、肝臓の病気や痛風も併発しているとのことだ。

なお、フグちゃん本人から、以下のコメントが寄せられた。「(本記事で扱った内容は)個人と担当主治医の間で話し合われるべきことであって、自らネットで公開するようなことではないと思う」。そうした理由から、疑われた点について「自分から反論することはない」のであり、このたびの記事の趣旨には賛成しがたいと主張した。ただし、障害の認定等について、法律上や制度上の観点から問題提起する記事を配信することまでを否定するつもりはないという。

※モザイク加工は当サイトによるもの

 

高橋 

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