●更新日 04/14●







規制値超えの産地からイオンに野菜が流れた背景





放射性ヨウ素の暫定規制値を超えた産地の野菜が、密かに出荷されていたことが発覚した。

千葉県旭市産のサンチュから、規制値を上回る値が検出された。そして、この地域から出荷されたものが店頭に並んでいることが明らかになった。最初に報じられたのは、イオン品川シーサイド店。その後イオンは、2011年3月30日から4月7日の間に、7都県の57店舗で旭市産サンチュを2200パック販売していたと発表した。



このような事態が発生した経緯について、4月13日に千葉県農林水産部安全農業推進課に話を聞いた。担当者によると、県の調査で暫定規制値を上回ったものがあったことが、3月25日に国へ報告された。ところが、国から出荷制限が出されたのは、4月4日。その間、県では生産者に出荷の自粛を要請していた。



一方、旭市は3月28日に、独自に検査を行っていた。その結果、規制値を上回る値は出なかったという。そこで、イオンと取引があった卸売業者グリーンファームは、規制値を上回っていないから問題はないだろうと判断。イオンと相談し、出荷の再開を決めた。ただし、この業者は自粛要請を知らなかったわけではない。

県の担当者の証言によると、出荷自粛を要請するに当たって、3月31日に会議を開き、各卸売業者に協力を呼びかけた。その時に、グリーンファームも会場に来ていたという。つまり、この業者は意図的に自粛要請を破り、イオンに話を持ちかけたのである。県の自粛要請には法的拘束力がないことが、結果として利用されたことになる。

イオンのコーポレート・コミュニケーション部にも取材を申し込み、事情を聞いた。広報担当者によると、今回の件は仕入れ担当者の確認不足によるものだったという。しかし、仕入れ担当者も事前に当該のサンチュの実態を把握した上で了承したようだと、県の担当者は言う。


イオンが言う「確認不足」とは、規制値を上回っているか否か確認しなかったということなのか。この点を問うと、「もちろん、そういった数値等は確認しましたけれども、通常の弊社の判断と違った判断を下してしまったという、大変恐縮なんですけれども、弊社の担当者の人為的なミスというところがございまして…」と広報担当者は述べた。

問題の再発防止に向けて、同社で、また、生産者との間で、確認を徹底していくという。では、問題を起こした業者とは引き続き取引するのか。広報担当者曰く、「今のところそこに関しましては、特に何か変更ですとか決定された事項はございません」

続いて、イオン品川シーサイド店へ向かった。



店内の売り場に、サンチュは見当たらなかった。買い物を終えて出てきた客に話を聞いてみたところ、この問題を既に知っていた人々もいたが、初耳との声も。

当サイトの取材を受けて初めて知ったという女性は、「えっ、何それ、やだ…」と絶句。同店でホウレン草を買ったばかりらしい。「他の野菜も大丈夫かって、疑っちゃったらきりないけど、心配になっちゃう」という。

先日の産経新聞の報道のように、マスコミによって不確かな情報が独り歩きすることもある。それが、時に「風評被害」と呼ばれる。

だが、今回の件では、出荷した側、そして販売した側に明らかに問題があった。

消費者の信頼を裏切る行為が一つでもあれば、真面目に取り組んできた他の業者全体に被害が及びかねない。

消費者への裏切りは、同業者への裏切りでもある。



高橋




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