●更新日 04/16●







原発施設シート遮蔽計画、保安院も知らない真相





福島の原子力発電所の建屋を特殊素材のシートで覆う計画があると、今月初めに報じられたことは覚えているだろうか。

この計画について、気になる点がある。

(1)計画内容の妥当性
2011年4月4日のZAKZAKによると、計画はゼネコンが提案したもの。「馬淵澄夫首相補佐官らが率いるチームで議論され、菅政権として東電に検討指示したという」。提案側、そして検討した人々の中に、原発事故の対策に十分な知見のある専門家は含まれていたのか。

(2)専門家からの異論
上記の記事をはじめ、各社の報道では、この件に専門家が少なからず反対したことを挙げている。ところが、決定に至るまでの過程や、その中のどのような段階で、誰が反対したのかといった具体的な情報はなかった。

(3)「政治主導」の決定
決定に至る過程では、専門家たちからの反対にもかかわらず、政治判断で押し切ったと報じられた。ここで言う「政治判断」とは何を意味するのか。また、その妥当性とは。専門家の知見よりも「政治判断」を優先したと、政府が公式に発表したのか。

以上の点について、計画が報じられた直後に首相官邸に取材を申し込んだ。すると、技術的な問題が含まれる質問であるため、官邸では回答できないという。詳細は、原子力安全・保安院に問い合わせてほしいとのこと。

そこで、経済産業省の原子力安全・保安院に連絡を取り、事情を説明した。

写真

すると、上記の3点については、何も情報が上がってきていないという。
可能な範囲で調べ、詳細について確認をとるので、少し時間がほしいとのことだった。だが、最初に取材を申し込んだ4月5日から1週間以上が経過しても、ついに回答は得られなかった。

なんと不透明な政策決定だろうか。

決定に至る過程について、情報を集約しているはずの原子力安全・保安院でさえ、関連情報を何も持っていないというのである。そして、報道内容の通りであるとすれば、専門家の知見を無視した非合理な決定だった可能性もある。

さらに、当サイトの読者経由で東京電力の社員を紹介してもらい、話を聞いてみたところ、この計画は内部でもあまり評判がよくなかったようだという。電話取材に応じた人物は、原子力関連の担当ではない。だが、関連する部署に勤務する知人から伝わってきた話として、次のように述べた。

「率直な話、計画に最初から無理があるってわけです。放射性物質を閉じ込めると、かえって危険だって新聞でも書かれてたけども、それは現場の連中が本当は一番知ってなくちゃいけないし、知ってるものなんでしてね。だから、単純にシートをかぶせれば外から見れなくなるけど、それだけだったら危ないんで、それをわざわざあえてやるのは、どういうことなのかっていうところがあって…」。

シートで覆うことで内圧が上昇すれば、再度の爆発を引き起こす危険性があるとの指摘も、当初から専門家によって提起されていた。

写真

遮蔽計画は、その内容に多少の変更を加えながら進行中だ。計画の中身だけでなく、不透明な決定過程も含めて多くの問題点がある。そのような計画を、国民は諸手を挙げて支持できるだろうか。

一国の運命を左右し得る重大な計画が、
こうして次々に決まっていく。




高橋




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