●更新日 01/13●


売国批判の産経新聞、HPの地図は中国の視点


日頃は「国益」重視の姿勢を表明し、朝日新聞への批判でもおなじみの産経新聞。ところが、同紙のHPで掲載していた世界地図が中国の視点に基づくものであることが発覚した。
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2008年1月10日のニュースウォッチでお伝えしたように、学研が地球儀の表記について中国からの圧力を受け、内容を変更したと騒ぎになった。この件について報じた産経の論調は、学研を「売国」扱いするものだった。「識者からは「国益を損ないかねない」と憂慮の声も上がっている」として、帝塚山大学名誉教授の伊原吉之助氏のコメントを掲載した。
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記事中で伊原氏は、次のように述べている。「世界地図の表記はその国の利益に直結しており、他国の主張にやすやすと屈服し、自国で販売するというのは主権侵害への加担であり、一企業の商行為でも不誠実のそしりは免れない。それが学習教材大手というからなおさらだ」

ネット上でのバッシングがあまりにも強かったためだろうか、学研は1月10日、自社HPに「『スマートグローブ』に関する重要なお知らせ」を掲載した。「不適切な表現・表記がありました」と認め謝罪し、当該の地球儀の販売中止を決めたと記している。また、既にこの地球儀を購入し返却を希望する場合、税込価格29400円で取引するとのことだ。

この告知を肯定的に評価する声も少なからずあった一方で、上記のように学研を批判した産経に対して、今度は注目が集まることとなった。それは、産経新聞HPにかつて掲載されていた「PDF版世界地図」の表記だ。この地図は、同紙HPがリニューアルされるに伴って消えてしまったため、現時点では掲載されていない。だが、Internet Archiveにて、その一部を確認できる。

まず、台湾に注目したい。一目で分かるように、中国と同じ色に塗られていて、更に「(台湾)」と括弧で括られている。つまり、台湾を正式な独立国としては認めていないということだ。また、やはり産経がHPに掲載していたGIFイメージの地図でも、台湾は中国に含まれている。これらの点は、産経が猛烈なバッシングを展開したはずの、学研の地球儀の政治的立場と同じではないか。

しかも、学研の地球儀との共通点は他にもある。択捉島までは日本領を示す青色に塗られているのだが、それより先はロシア領を示すために用いられている桃色になっている。このような区分は、「台湾島」と同様に、中国が発行する地図の前提になっているものだ。
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そもそも産経は、学研を批判したZAKZAKの記事で、次のように書いていた。「樺太の南半分や千島列島をロシア領として色分けしている。これらはサンフランシスコ講和条約(1951年)で日本が領有権を放棄した後、帰属先が未定となっているため、日本の地理の教科書では、日露のいずれにも属さない白い表記になっている」

既に消去された内容であれば、現在の主張とは異なっても問題ないということだろうか。一記者の認識に関する事柄であれば、「それは当社の公式見解ではない」と言えるかもしれない。しかし、これは産経が同紙HPに掲載していた地図に関する問題であり、そこに込められた政治的主張である。

「世界地図の表記はその国の利益に直結」しているという識者のコメントを掲載する産経にとって、これは放置できない問題だろう。「不誠実のそしりは免れない」結果だけは避けてほしいものだ。



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