●更新日 01/15●


サンゴ事件を忘れた?朝日「KYといわれてもいい」


朝日新聞が成人の日に掲載した社説が、かつての「サンゴ事件」を連想させる内容だったため、ネット上で大きな話題になっている。

2008年1月14日の朝日新聞社説の題名は、「成人の日に―「KY」といわれてもいい」。社説では、「大人になったら、ぜひ自分の力で考え、自分の足で立ってみよう」との提案がなされている。社会に出れば、あらかじめレールが敷かれているわけでもなければ、常に正解が一つであるというわけでもないのだから、自分なりの考えや判断が必要になってくるという。



これに続く箇所から、いつもの朝日独特の論調で話が展開されていく。「それだけに、若者に広がる「KY」(空気を読めない)という言葉は気がかりだ」として、異質な相手を排除すること、仲間はずれを恐れて同調しようと必死になることを批判する。「流行語が招くこの風潮にがんじがらめになってしまうと、まわりに流され、やがて自分の意見さえ持てなくなる」とのこと。



上記の部分に限っても、ネット上では「おまえが言うな」と朝日に対する膨大な数のツッコミが入ったことは言うまでもない。それは何といっても「KY」という表現だ。この言葉は、朝日新聞の信用を限りなく低下させる一因となった、悪名高き「サンゴ事件」を連想させる。

「サンゴ事件」とは、1989年4月20日の朝日新聞に掲載された記事「サンゴ汚したK・Yってだれだ」に端を発する捏造問題を指している。記事によると、沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へサンゴの撮影に行った朝日の記者が、巨大なサンゴに「K・Y」というイニシャルが刻印されているのを発見したという。そのサンゴは世界最大としてギネスブックにも認定され、環境庁(当時)も周辺を海洋初の「自然環境保全地域」及び「海中特別地区」に指定したとのこと。

記事の末尾には、次のように記されていた。「日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の……。にしても、一体「K・Y」ってだれだ。」

記事掲載後、取材した人物がサンゴを傷つけたのではないかとの指摘が、地元のダイビング組合からあった。すると朝日は、謝罪記事「本社取材に行き過ぎ」を5月16日に掲載。取材に当たったカメラマンの一人が、既にあった「K・Y」という落書きを、撮影効果を上げるためにストロボの柄でこすって目立つようにした、と説明した。ところが、この記事も事実ではなかったことが発覚し、5月20日に「落書き、ねつ造でした」という記事が掲載された。落書きは元々あったものではなく、朝日の記者自らが記事を捏造するために刻印したものだったという。



このサンゴ事件は、昨年「ネット流行語大賞」に選ばれた「アサヒる」の象徴とされている。昨年末には、同賞企画者の深水英一郎氏が、「アサヒる」の大賞獲得を記念して朝日新聞に表彰状の授与を打診したが、朝日はこれを完全無視して話題になった。「さすが元祖「KY」の朝日は空気が読めない」と、サンゴ事件との関連で朝日を揶揄する人々が続出したことは記憶に新しい。



先程引用したように、今回の社説では、「KY」を「流行語が招くこの風潮」と批判している。しかし、「KY」も「アサヒる」も、いつも流行語の発信源となる不祥事を起こしているのは朝日新聞自身なのだが・・・。「八〇年代朝日新聞の記念碑」は、21世紀にも語り継がれている。




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