●更新日 09/20●


パクリ騒動の「イキガミ」は政府批判の漫画だった!


映画も公開間近の漫画「イキガミ」(小学館)にパクリ疑惑が浮上し、話題になっている。

騒動の発端は、同作品が星新一氏の「生活維持省」に似ていると、次女のマリナ氏が問題提起したことだった。「星新一公式サイト」では、両作品の類似点を羅列している。2005年の時点で、日本文藝家協会も両者の類似性を小学館に指摘していたようだ。

この件に対する小学館の回答も、上記HPに掲載されている。コミック編集局執行役員の片寄聰氏によると、「イキガミ」の作者である間瀬元朗氏が参考にしたのは「赤紙 男たちはこうして戦場へ送られた」(創元社)であり、星氏の作品は参照していなく、これまでに読んだこともないという。

今回の騒動との関連で注目したいのは、「イキガミ」について間瀬氏にインタビューした記事だ。東京新聞では2008年5月8日、連載「ニッポンの空気 この息苦しさ」第5回にて、「極限の生描く「イキガミ」」と題する記事を掲載している。

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間瀬氏によると、「イキガミ」を描いた一つのきっかけは、2004年にイラクで香田証生氏が拉致され殺害された事件だったという。「当時の小泉純一郎首相はテロと闘う姿勢を貫いたが、結果的に香田さんは国益の人柱になったように間瀬さんの目に映った」と記事には書かれている。

「戦後は軍国主義を排除し、平和国家を歩んできたはずではなかったのか・・・」というのが、香田氏へのバッシングに対する間瀬氏の疑問のようだ。それは、戦時下の「国に殉ずる」という自己犠牲の精神と対比されている。「日本人にとってのみ込みづらい事実だったとはいえ、『自業自得』と声高に香田さんの死を片付けようとする空気に、危うさを感じた」と間瀬氏は語る。このように考える中で、漫画のアイディアが浮かんだとのことだ。

更に間瀬氏は続ける、「例えば(安倍晋三前首相が掲げた)『美しい国』というキャッチコピーがあったでしょ。分かりやすい言葉だから一般の人は分かったつもりになってしまう。実はそれが怖い」。記事によると、間瀬氏が望むのは「美辞麗句を国家が国民に提示した時、国民が疑問に思う社会」であるという。

そのような意図によって描かれた「イキガミ」だが、「生活維持省」との類似性については、これまでにネット上でも度々指摘されてきた。星氏のHPに「生活維持省」全文が掲載されているので、興味のある人は読み比べてみてはいかがだろうか。



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