●更新日 12/29●


「レジ袋追放は偽善」という主張は、なぜ正しくないか


2009年12月28日、産経新聞の「iza!」に「レジ袋追放は偽善、ペットボトルは燃やせ…常識覆す提案」という記事が掲載された。

記事では、読者からのメールを紹介。「スーパーがレジ袋をタダで渡さないのも、単に経費節減のためなのでは?エコブームにうまく乗せられているような気がします」という。この読者が影響を受けた書物は、武田邦彦氏の著作「偽善エコロジー」(幻冬舎新書)。「レジ袋は石油の不必要な成分を活用したもので「レジ袋を追放しても石油の消費量を減らすことができない」」といった論点が、記事では挙げられている。



これについて、生命倫理の研究者に話を聞いてみた。同氏によると、「レジ袋追放は偽善」という記事中の表現は、誤解を与えかねないという。「偽善エコロジー」という題名は過激だが、同書の中で武田氏は、レジ袋を使用しないということ自体が偽善であるなどとは書いていない。「まえがき」には、次のようにある。

「この本は、これまで続けてきた「ウソの環境生活」をこの辺でやめよう、これからは後ろめたさのない生活、表面上は環境にいいといっているけれども、実は自分が得すればいいのだという「環境」から、本当に日本の将来のため、子孫のためになる「環境」に切り替える時期ではないかと思い、執筆しました。」

同書の内容は、現時点で「環境にやさしい」とされていることが科学的に見て、いかに間違っているかということが中心となっている。それを告発することで、現状を変えようというのだろう。レジ袋の問題についても、「個人の思想信条でレジ袋を使わないのは良いのですが、とても社会運動として展開したり、他人に強制するものではありません」(21ページ)というのが武田氏の主張だ。



また、前出の研究者は、「科学的に正しいかどうか」という判断と、「行為が正しいかどうか」という判断は、単純に直結させるべきではないと述べる。確実に「環境にやさしい」ことでも、それが正しい行為であるとは限らない。利害が対立する場合や、環境を破壊あるいは復元する程度について合意を図る必要がある場合もある。このような場合、「環境にやさしい」を至上命題として押し付けることは、逆に問題を引き起こしてしまうだろう。

ちなみに、武田氏が同書で提示している事柄については、各種の異論も提起されているようだ。興味のある人には、それらも読み比べてみることをお勧めしたい。




探偵T



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