●更新日 03/11●


系列店の客も奪って繁栄?一人勝ちする伊勢丹新宿店


2010年3月14日、伊勢丹吉祥寺店が39年の歴史に幕を閉じる。

昨年には、同店の閉店が決まったと発表され、マスコミが一斉に報じた。当時の記事を読み返してみると、吉祥寺の街づくり構想の一部を担うものとして、地元関係者に期待されていたと記されている。また、同店を長年愛用してきた客の声も、各所で紹介されている。

その後の状況を確認するため、現地を訪れた。同店周辺では、商店街に閉店セールの告知が数多く掲載されていた。店の内外にも同様の告知があり、一帯はまさに伊勢丹一色という雰囲気だった。店内をのぞいてみたところ、時間帯にもよるのかもしれないが、来店客の年齢層は概ね高めであった。

閉店セール

伊勢丹吉祥寺店

周辺で道行く人々に話を聞いてみたが、その反応は両極端だった。「行きつけの店がなくなることは残念だ」という反応と、「これまでも利用していなかったから、あまり興味がない」という意見である。後者の回答について、さらに質問をしてみたところ、伊勢丹の新宿店に行っているという人々が何人もいた。

その理由を尋ねると、「品ぞろえが格段に違う」と誰もが答えた。中央線一本で行けるので、新宿で用事を済ませるという。この点について、伊勢丹の店員とも交流があるアパレル関係者に聞いてみたところ、「特にファッションでは、新宿店の集客力が他の伊勢丹を圧倒している」とのことだった。

同氏によると、都心のデパートでは、伊勢丹の新宿店がファッション関連の品ぞろえと集客ではナンバーワンだという。その影響は、他の百貨店だけにとどまるものではない。伊勢丹に入っている高級ブランドの一部では、ブティックの常連客だった人々を伊勢丹に奪われてしまうという現象まで起きているそうだ。

その最大の理由は、伊勢丹アイカードの存在である。商品を購入する際に、年間の購入額に応じて割引がなされる。最大で10%の優待となるため、値段の高い品ほど、通常価格で販売されるブティックとの金額の差が大きくなるというわけだ。そのため、伊勢丹とブティックでは扱う商品を変えるという戦略をとるブランドもあるらしい。

伊勢丹アイカード

一方、新宿店と伊勢丹の他の店舗との落差は大きい。来店客の需要や店の規模を考慮してのことであると思われるが、吉祥寺店のように、地元にある店舗の品ぞろえには満足できない人々は、新宿店へと流れてしまう。経営側から見て、このような形での新宿店の繁栄は、成功と言えるのだろうか。




探偵T



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