仙台で調査があると、かならず立ち寄る行きつけのクラブ『Ｋ』で私の席についたホステスから奇妙な話を聞いた。
同じホステス仲間のあいだでも同様の光景を見たという者が何人かいて、仕事まえにはよくこの話で盛り上がっているらしい。 はじめはよくあるその街特有の怪談話だろうと黙って聞いていたのだが、そのマンションが私の宿泊しているホテルからそう遠い距離ではないと教えられ、軽い気持ちで帰りに立ち寄ってみた。
　たしか六階とホステスが言っていた階数を見上げてみたが、何も見えず今度は方向を変え、様々な角度からそのマンションを眺めてみた。
　幽霊らしきものをみることはできなかったが、時間が過ぎれば過ぎるほど不吉な予感と寒気が身体じゅうに走るようになり、暗闇と静けさも手伝って得体の知れない恐怖を感じだした。 『今日は帰ろう』、すこし弱気になり、その夜は何事もなくマンションを後にした。
　一晩明けても嫌な予感は消えず、その日の午後ふたたびそのマンションへ出て行きそこの住人に聞き込みを開始した。 予感は当たった。三階に住むＡさんは静かな口調でショッキングな話を語りはじめた。