「ワンピースを買ったのは今年の四月。だけど、あまり気にいらなくて、1回着ただけで、タンスのハンガーにかけっぱなしにしていたんです。
ある日、仕事が終わり、同僚の友人と深夜遅くまで飲み歩いて寮へ戻ったときでした。玄関を開けるとワンピースが部屋の中を舞っているんです。
飲みすぎていたのですこし酔いがまわるっているのだと目をこすると下に落ちているだけで、そのときは気のせいだと思ってそのまま寝てしまいました。
ところが次の朝、冷静に考えるとタンスにしまってあるワンピースが、なぜ床に落ちているのか、そう考えるととても不安を感じたのです」 ここまで話すと彼女は突然泣きだした。 私は心が痛んだが彼女を慰め、さらに深く追求する。彼女の手を握るといくぶん平静を取戻し、ふたたび静かに語りはじめた。 「それから、しばらく寝つけない日が続いたので、隣に住む明日香に事情を話し、しばらく彼女の部屋で寝させてもらったのです。 そしてこのワンピースを手放すことを決意し、踊り子の友人に譲りました。 その晩です。寝ている私を明日香が起こすので目を覚ましました。 『どうしたの明日香、こんな夜ふけに』と言うと、彼女の髪の毛が突然伸びはじめ、 顔が変形し、髪を振り乱して『なぜ、私のワンピースを人にあげるの』と迫ってきたのです。 |
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