車にまつわる幽霊話は,墓地やトンネルと同じぐらい多い。
 事故車を買ったら事故にあったとか、どこそこを走っていて幽霊を乗せてしまったとか。
 しかし、ほとんどが全く根拠のない話である。話の作り手の意図が「怖がらせてやろう」ということに集中しており、客観的な事実にはいっさい触れていないからだ。
 私はあるいきさつから、一台の車を調べることになった。

 九十五年の五月、テレビ朝日の『目撃ドキュン!』という番組で、当社のスタッフが「私たちに調べられないものはありません」と豪語してしまった。
 それを見ていた茨城県の太田香織(仮名)さんから、「ぜひ調べてほしいことがあるんです」という手紙がきた。車の中で,幽霊に出くわしたというのだ。
 手紙の主要部分は次の通り。


 最近のことです。つき合ている彼が、中古車センタ−で黒い小型車を買いました。さっそくドライブに行ったのですが、そこで変なことが起きたんです。
 たとえば、何もしないのに助手席の窓が開いたり、エアコンがついたり・・・・。
カセットテ−プが途中で切れ、しばらくしてからいきなり再生したこともあります。
 彼は「電気系統の故障だろう」と言い、すぐにその車を買った中古車センタ−にもって行きました。
 そこの所長は、自分のところに立派な修理工場があるのに、勝手に車をあるメ−カ−のディ−ラ−にもっていきました。費用は会社側でもつと言って。