私は、この本の執筆途中から、「現場の調査は、夜、一人で行くこと」と、調査員に義務づけてきた。しかも、深夜に現場を視察し、朝を迎えたあと、近隣の聞き込みをするようにした。こうすれば、最初から余計な先入観をもたず、霊に接触しやすい環境になるからだ。指令を守り、私の専従調査員が幽霊話の宝庫、千葉県東金付近を調べたときの模様を報告すると……。
隠れた心霊スポット、「雄蛇が池」に調査員、坂井がバイクで到着したのは深夜の二時をすこしまわったころだった。
彼はまず池を一周しようとした。どんよりとした水辺は、かなりの迫力だったらしい。
一人だけというのは、二人のときの十倍は怖い。
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