去る



 供養が終わると、住職さんはこんな不思議な体験を話してくれた。
 事件当日の朝、彼は奥さんに、
「眉間に大きなホクロのある赤ん坊を、抱いた女性の夢を見た」と話していた。


 その日の夕方、母子の遺体を見た彼は愕然とした。赤子の眉間に、引き上げられたときにできたと見られる傷があったのだ。朝、夢に出てきた赤子の顔にあったのは、ホクロではなかったと悟った・・・・・・。


 すべての調査を終えた私は、深夜、坂井と二人で片貝漁港へ向かった。波はテトラポットに吸収され、小さな泡になって消えていった。まるで、夫婦と赤ちゃんの命のように・・・・・・。