翌朝、私は現場である池へ行き、付近の聞き込みを開始した。


 恐怖体験をした近所の住人、飯関 貴之(三十四歳)さんの話によると……。
 約三年まえ、午後一時ころ、友人の吉原さんと二人で池の北岸沿いの山道を歩いていたところ、急に何者かに背中を叩かれた。


 吉原さんは彼の前を歩いていたから、後ろに人がいるはずない。
 おかしいな、と思って振り返ると、なんと頭からビショビショに濡れた女が立っていた。
 顔は髪の毛で見えない。飯関さんは大声を上げて逃げ、後ろの女に気づいた吉原さんもつまづきながら逃げた。ところが、池のボートハウスにさしかかったところで、二人の前にまた同じ女が現れた。


 濡れた髪の毛の間から顔が見える。水でふやけたような頬はパンパンに腫れ、目玉がめくれ上がっている。