彼女は、歩いてもないのにすーっと近寄って来る。
二人はまた大声を上げながら逆戻りし、山道を上がって難を逃れたとのことだった。


 ひどく興奮しながらしゃべる飯関さんを見ていると、とてもデマを言っているようには見えない。私は、吉原さんの電話番号を聞き、すぐかけてみた。
 そのときは不在だったが、午後八時に連絡がつく。恐怖体験をしたか聞いてみると、彼も飯関さんとまったく同じ証言をした。


さらに聞き込みを続けると、一人の釣り人から有力な情報を得ることができた。
十数年まえ、池のポンプ場で若い男性が首吊り自殺したというのだ。
 そのポンプ場は、昨日から取り壊し作業がはじまっていた。なんと、坂井調査員が昨夜おんぶさせられた場所である。
 近くの商店で自殺者の身元を聞き込むと、その男性は東金市内のスーパーに勤務する男性だということがわかった。彼は新婚だったが、三角関係を苦にして自殺したという。



 坂井がおんぶした霊は、溺死の女性と、自殺した男性のどちらだろうか。


 彼は、びびってしまい霊の姿はよく見ていない、と言っている。(探偵失格?)