去る

彼の霊は、今も旧犬鳴トンネルをさまよっているにちがいない。痛くてたまらない、誰か助けてくれと・・・・・・。

凄惨な事件を含め、福岡支局の太田君に伝えると、そんな現場で調査をしていたのかと絶句し、そんな怖いところには、もう絶対行かないと言った。人の記憶は一年でかなり薄れる。それが十年近くなると、ほとんどの人が忘れ去り、現実の霊現象だけが注目されるようになる。しかも、霊が見える人間と、そうでない人間の二通りがあるから、本当の現象におひれが付き、今回のようなただの噂話になってしまうのかもしれない。