●更新日 05/21●

動物たちの怨念 第2夜


怨念……と言うと、人の魂や怨霊を思い浮かべる方が多いだろう。
しかし、霊は人間だけに存在する訳ではない。
虐げられた動物たちの呻きや叫び−−−それもまた”怨念”として存在するのだ。
第2夜の今回も、私が調査などで聞いた話、自らが経験した出来事などを話したいと思う。

焼却炉からの鳴き声

以前、当サイトに於いて、『ペットブームの影に…』というシリーズを組んだ事があるのをご記憶でしょうか?

参考:ペットブームの影に・・・4

捕獲された動物、飼い主に捨てられた動物……様々な理由で保健所へと辿り着き、そして……殺されていきます。
”保健所の在り方”についてはまた別の話になりますので、割愛。
今回は、この殺処分場でのお話です。
生き物の生死に係わる所には、やはり不思議な話が付いてきます。勿論、この動物の処分場も例外ではありません。

ある日、G県の処分場に1匹の犬が届けられました。
町に徘徊していた野良犬狩りで捕獲された犬だったそうです。
徘徊していたとは言え、その犬の首には立派な首輪が付いていたそうです。
飼い主を待つかのように、人の顔をじっと悲しそうに見つめる大人しい黒い犬だったそうです。

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しかし、首輪がついていようがなかろうが、飼い主の届けがなければ他の野良犬同様、”殺処分”という事になります。
この犬もまたそのパターンだったそうです。
数日の待機中に飼い主からの届け出は無く、……殺処分が決定しました。

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そして処分の日。
ガス室で、窒息されてから、そのまま焼却炉へ……。
焼却炉の蓋がロックされたのを確認。そして点火。
焼却炉の中では火炎が吹き荒れ、ガスで死んだ動物をものの数分で骨と灰にしてしまいます。
しかし、この時は違った。
何やら、

ゴツン……

ゴツン……

と音がする。
異変に気付いた所員が近付くと、犬の鳴き声が聞こえる!

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そう。
この犬は死んでいなかったのです。
実際に聞いた話ですが、ガスに耐えて生き残った犬が稀にいるそうで、そういう犬たちはみな、煉獄の苦しみから逃れようと焼却炉の壁にぶつかるのだそうです。
この犬もそうでした。

身体を炎に焼かれながらも、激しく壁にぶつかり続けました。
その音も次第に小さくなり、そして……聞こえなくなりました。
その犬は生きながらにして火葬されたのです。
所員も、そのような事が初めてでは無かったにしろ、心で念仏を唱え、成仏を祈ったそうです。

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しかし……。



それから1ヶ月ほどが経ちました。
生きていた犬が居た事も所員の頭から薄らぎ始めた頃です。
たまたま遅くまで1人で仕事をしていた所員の耳に、かすかながら鳴き声が入りました。
処分場には、処分前の犬たちも多く待機しています。ですから、犬の鳴き声くらいは常に聞こえて来るので、大して気にはしていなかったそうです。
しかし、その鳴き声が聞こえて来るのは、どうも、
”隣の動物たちが居るケージでは無く、自分の居る処分場から”
だったようなのです。
場所が場所なだけに、所員は肝が冷える思いをしました。
だが、気になって仕方が無い。
そこでその鳴き声が聞こえる方へと、ゆっくり、ゆっくりと向かって行ったのです。
そして、
その鳴き声が焼却炉から聞こえて来るという事に気付いたその時、
所員は見ました。




あの時死んだ黒い犬を筆頭に、闇に無数に浮かぶ犬たちの目を。



探偵ファイル



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