フィリピンにも伝染した中央線の都市伝説
先日の記事でも紹介した、JR中央線の都市伝説。この都市伝説は、今や海外にまで拡がっているという。
その一つのきっかけは、1990年代後半の出来事だったのではないかと、当時大学生だったSさんは語る。客員教授としてフィリピンから来日したばかりのN教授は、中央線のホームの端の方に立って電車の到着を待っていた。この日、初めて日本の電車に乗ることになったという。
数分後、到着を知らせる放送が流れ、電車がホームに入ってきた。その瞬間、N教授の前方に立っていた男性が、突然線路に飛び出した。電車は慌てて急ブレーキをかけたが間に合うはずもなく、男性は即死した。N教授は、男性の飛び込み自殺を目の当たりにして大きな衝撃を受け、言葉を失ったという。
Nさんが自殺に遭遇した現場
フィリピンでは一度も見たこともない光景で、これが教授にとって、日本で最初のカルチャーショックとなったようだ。N教授は、勤務先の同僚やゼミの学生たちに、そのことを語った。すると、中央線は「自殺の名所」で頻繁に飛び込み自殺が発生するという話を何人もから聞いて、N教授は更に衝撃を受けた。
数年後、Sさんはフィリピンを訪れる機会があった。その時に出会った一人から、「日本には死を招く呪いの電車があるのか」と聞かれた。なぜそんな噂が流れているのか不思議に思ってSさんが調べたところ、どうやらN教授の周辺からそのような話が拡がったようだ。帰国したN教授が、日本でのショッキングな体験を周囲の人々に話した結果らしい。
一昨年、Sさんにフィリピンの知人から一通のメールが届いた。それによると、ある事件をきっかけにN教授が身柄を拘束されたという。驚いたSさんは、現地の人々とメールでやり取りをして情報を集めた。その過程で、「N教授が捕まったのは、日本で呪われたからではないか」などという噂が一部で流れているという話をSさんは聞いた。
N教授の体験談は、本人の意図に反して都市伝説という形をとって、海を越えて拡がっていったようだ。噂話の恐るべき伝染力を思い知らされる事例である。
高橋
|