●更新日 08/18●


コラム 嗚呼、愛しのエンタメプロレス・東スポ   vol.1


東スポ(東京スポーツ)というのは、ある意味プロレスなんです。



東スポという一つのリングがあって、そこで書いている「ライター」や「作家」「記者」というプロレスラーがいて、不思議な事とか、面白い事を面白おかしく“事件=プロレスの試合”として表現をする。そして、それを読者に届けるという“一連のアングル”が成立しているのです。

“アングル”というのはプロレス用語で「演出」とか「筋書き」の事なんですが、その中で僕はオカルトを担当していて、担当の記者と一緒に色んな事件を面白く、ショーアップして、みんなに伝えていくというのが仕事なんですね。勿論、プロレスラーらしくけれんみたっぷりにね。

この“東京スポーツ誌上のアングル”というのは、僕たち作家や記者の間だけでなく、東京スポーツを愛読する読者の間でも成立していているんですよ。「ゴム人間親子出現か?」とか、「羽根型UFOららぽーと上空に出現」とか、そういうボケをかましても、それを楽しみながら味わってくれる東スポのファンが沢山いるんですよ。

ーーーなんせケネディ暗殺の時に「ブッチャ血だるま!!」って書いたぐらいのエンタメメディアが東スポだからね(笑)
この前も世界水泳で日本選手が金メダル取ったということより、羽根型UFO出現かの記事の方が大きかった。それが東スポの世界観なんですよ。

読者もそれを知ってて、楽しみながら買ってもらう。そして「嘘だぁ〜(笑)」といいながらも、「いやいや、本当にUFOは飛んでいるのかな」と妄想たっぷりに、思うところが東スポの楽しみ方の一つなんです。言い換えれば、リアルとフィクションの間を彷徨うのが東スポの楽しさ。プロレスの楽しみ方とまったく同じなんですよね。



ショーアップの仕方について、具体的に言ってみれば、例えば、柳原加奈子ちゃんが雪の写真を撮って、雪の中に“おっさんの顔があった”という事実があった。これは「雪の中の幽霊!」とすれば済む話なんだけど、それでは面白くない。
だから、ここでアングルを錬ってみるわけなんです。江戸時代に出現していたと伝えられている「妖怪・雪爺復活か!?」とすると、「雪の中の幽霊」というよりも面白くなる。そこで一つのアングルが成立して、東スポワールドが出来上がるんですよ。そうやって東スポの記事は作っていく。
「ゴム人間」の場合でも、「頭の細長い怪しい人間が出没!!」じゃ面白くないから、「ゴム人間明治神宮に出現か!?」としたほうが面白くなるんだよね。日本人は元々、洒落や通という文化が好きだったんですよね。

こういう風に東スポというのは、「みんなを幸せにしてくれるオカルト」なんですよね。
だから僕は「学研のムー」とか「オウム真理教」みたいに、思いつめてしまうオカルト、客観視できない全肯定のオカルトを僕は否定しているんです。
1999年前後におけるオウム真理教事件というのは思いつめたオカルト信奉者によって引き起こされた悲劇ですね。そういう愚かなことを引き起こさない“楽しいオカルト”をやりたいんです。

だから、東スポの不思議報道あり方は正しい。楽しいオカルト成立のヒントがあるんです。楽しいオカルトの手法は幾つかあるんですが、そのひとつが東スポのスタイルにあるんですよね。
東スポは堂々と「これはエンターテイメントですよ!」と割り切ってやっている。それが東スポの考え方であって、僕の考え方でもあるんですが、これが東スポの正しい楽しみ方だし、マスコミとしても潔い。
ある意味健全なオカルトですね。逆にオウム真理教の事件を引き起こした“思い込みの強いビリーバーによるオカルト”というものを、これから否定していかなければならない。

思い込みの激しいオカルト側からしたら僕たちは目の上のタンコブで早く潰したい。と思っているかもしれない。でも、僕たちは潰れることはない。何故なら、もはや世の中はそういう時代になってるんだから。



これから指示されるオカルトというのはこういう理念があって、楽しく演じているオカルトではないかなと、僕は思っているんです。



山口敏太郎



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