●更新日 08/30●
2012年に人類が滅亡する?(後編)
・皆既日食と天災
日食とは、太陽と月の軌道が交差することにより発生する自然現象である。当然、皆既日食の起こる理由は判明しているのだが、発生時に事件や災害が起きると噂されたり、不吉の前兆だと思われていた。
マヤ文明では、皆既日食が太陽の死を意味しており、時代の終焉を示すと解釈された。エジプト神話でも、太陽神ラーが、大蛇アボビに呑み込まれてしまう凶事とされ、インドの二大叙事詩のひとつ『マハーバーラタ』では、悪魔ラーフが太陽と月を飲み込んだと表現されている。皆既日食に纏わる伝承は、基本的に太陽崇拝のある地域に多いのだが、ギリシアの「オデュッセイア」にも日食が描かれている。
日食への畏怖心は東洋にも存在する。日本においては、皆既日食を太陽神・天照大神が怒って天岩戸に隠れたために起きたと解釈され、中国では皇帝の政治が乱れると、日食が発生すると推測された。
神話や民俗学の範疇ではなく、歴史的事件と皆既日食のシンクロも現実に発生している。1936年6月19日(昭和11年)に北海道で見られた皆既日食の時は、2.26事件が発生、高橋是清蔵相らが殺害された。このクーデター未遂は、後の軍国主義、太平洋戦争に繋がっていく。
日本での皆既日食観測で一番近い年代ものは、1963年であり、この時は日本の力道山やアメリカのケネディなど暗殺劇が続き、世情が混乱している。
無論、日本以外での皆既日食観測地域でも同様の不気味な事件が起きている。
1998年8月 、インドネシアで皆既日食が観測された時は、スハルト大統領の辞任、副大統領だったハビビ大統領が誕生したが、翌年には再び政権が倒れている。その後、軍部によるピアク島民の虐殺事件、そして国際的に批判を浴びた東ティモール紛争へと繋がっている。
2000年2月5日、南極にて部分日食が観測された時は、 この年から海氷の融解が進行し、氷河が海中に崩落を続け、海面上昇問題が大きく取り上げられた。2001年12月15日 北アメリカ南部にて、金環日食が観測されているが、この年には「9.11ニューヨークテロ」が発生し、世界がアフガニスタン侵攻、イラク戦争と突き進むことになる。2008年8月1日には、ロシア、モンゴルにて皆既日食が観測されているが、この年、ロシアを永年に渡って支配してきたプーチン政権が幕を閉じている。
不気味な偶然だが日本でこのプレゼンが行われている2009年7月22日、今世紀最長の皆既日食が鹿児島県のトカラ列島を中心に、永良部島、屋久島、種子島、喜界島、奄美大島など各地で観測されている。この皆既日食はいかなる異変を引き起こすのであろうか。自民党政権の崩壊、新政治体制の誕生を意味している可能性はある。
2012年5月21日、日本では関東、関西南部、九州・四国・などで再び日食が観測できる。果たして何が起こるのであろうか。
・微かなる希望
今回の内容は、安易に2012年の人類滅亡を煽り立てるものではない。2012年という未来は悲劇的な結末にすることも、幸運な結末にすることも可能である。つまり、回避可能な未来であるのだ。オバマ大統領が常に口にしている”チェンジ”という言葉は、決して政治や経済の変革を意味するだけのキーワードではない。地球上の一人一人が、心の中に”チェンジ”という概念を抱く事で、悲劇的な未来を幸運な未来にチェンジすることを意味しているのだ。つまり、この映画は悲劇的な未来の可能性を描く事で、人々の心の中に小さなチェンジという概念を引き起こし、運命や来るべき危機を回避させるのが、制作目的のひとつであると推測される。
突然、出会いがしらに交通事故に遭遇する場合より、常に「事故が来るのではないか?!」と身構えて注意を払っている場合の方がダメージは少ないし、復活も早い。この映画による啓蒙により、リアルに迫っている未来の恐怖をみつめる人々が増えたとき、人類の歴史の時間軸がポジティブな方角に変化していくのだ。歴史とは大勢の人間の共同幻想によって構成されている可能性が高い。今からでも時間軸をよい方向にチェンジさせるのだ。
2012年が恐怖の年なのか、それともよりよい方向への転機となる年なのか。全ては、一人一人の心の中の有り様によって違ってくるであろう。
山口敏太郎
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