幽霊屋敷


FC 海浜


《幽霊屋敷の噂》

10年ほど前、この屋敷で一家5人惨殺事件があった。その5年ほど後にそれとは知らずに引っ越してきた川村夫妻が、ノイローゼになりやはり心中してしまった。それ以来、屋敷は廃屋となり、朽ち果てている。家の中には夫妻の使っていた布団や写真、本などがそのまま置き去りにされていて、怨念が屋敷中にみなぎっているようだ。
5人の人影を見たという人や、どこからか突然白い老婆が現れて話しかけられたという人が続出、今では屋敷の周りに有刺鉄線が張り巡らされ、入り口にお札がたくさん張ってあるという。ちなみに白い老婆に「○○だよ。」と言われたら、かなりまずいらしい。○○がなんという言葉なのかは不明である。

《現場調査》

場所は佐倉市ユーカリが丘である。調査員A・Bはユーカリが丘の老人、商店街の店主、井戸端会議のマンションの女性、郵便配達員などに屋敷の所在について聞き込みを開始した。しかし、予想に反し、新興住宅街のせいか屋敷について知っている人は現れず、4時間ほどしてやっと2件の情報を得られた。いずれも「幽霊屋敷」としてではなく、「有刺鉄線に囲まれた不気味な廃屋」というものであった。場所はユーカリが丘ではなく、隣町の「上座1丁目」の藪の中であることが判明。
幽霊屋敷にたどり着いたのは、日も暮れかけた夕刻。屋敷は竹やぶの中にひっそりと建っていた。塀や垣根はなく、古い平屋のかやぶき屋根の農家風の造り。そのかやぶき屋根はほとんど崩れ落ち、4部屋のうち半分を潰してしまっていた。朝から雨天で、どんよりと薄暗い空気の中、屋敷は一層の不気味さを増していた。

築30年以上は経っていると思われ、前面に張り巡らされた有刺鉄線に躊躇させられた。入り口には噂にあったお札は見あたらない。入り口付近にある赤いポストは、錆びて朽ちかけていたが、心中したとされる川村夫妻の名が「川村好秋・しずこ」と、マジックではっきりと表記されていた。
屋敷に入って最初に目に入ったのは、畳が腐ったような床の上一面に、散乱した書類や本や布団であった。

また「川村朋代」という文字が紙一面に書かれたものが20枚も束になって落ちている。また何の為にあるのか不明だが半透明のプラスチックケースに入った仏具もあった。
次の部屋には壁に斜め傾いたセピア色に変色した写真がかかっている。写真は、心中した家族の縁者なのか、着物姿の一人の高齢のやせた男性が厳しい顔でこちらを見ていた。