浜宿海岸


FC 八千代


《浜宿海岸の噂》

1982年頃から幽霊を目撃するドライバーが増え始めた。さらに砂浜では人の泣き声が聞こえるという。

実は同年に1月、4月、5月と続けて、合計5名の男女が焼身自殺を遂げており、その全員が44歳だった。

他にも当時海岸入り口にあった龍神様の鳥居を撤去しようとしたために祟られたのではないか? とも言われている。なお海岸では住職により霊を鎮める御祓いが行われた。






《現地調査》

調査の結果、浜宿海岸で1982年に起きた3件の焼身自殺について確認が取れた。

1982年1月18日午前7時50分頃、同海岸を散歩中の男性が海岸から20mの所で焼けただれた車を発見。トランクからは半ば白骨化した遺体が発見され、車のナンバーから遺体は千葉市在住のバー経営者、A子さん(44歳)と判明。茂原警察署は殺人事件と見て捜査する。

同年4月6日午前7時30分頃、同海岸で車が燃えているのを通行中の運転手が発見、茂原署員が駆けつけた。中には黒こげの死体と横に腕時計と車検証が入った靴が脱ぎそろえてあった。調べによると、遺体は東金市在住のバス運転手、Bさん(44歳)で自宅から遺書が見つかった。

同月21日午前7時50分頃、道路管理事務所所長が炎上中のトラックを発見。遺体は炭化しており車のナンバーから柏市在住の会社員Cさん(44歳)と判明、自殺と断定された。

亡くなった3人は皆44歳であり、焼死体と言う共通点はあるものの3人を結びつけるものは特に無い。また1件目の殺人事件では未だに犯人は見つからず時効をむかえ迷宮入りとなる。



当時御払いをした今田錬浄住職(67歳)によると焼身事件が相次いだ1982年5月1日、警察、消防、地元関係者が集まり供養にあたった。
供養の要請は自治体の関係者からあり、当日は雨の中死者の霊を慰めた。幽霊などの目撃は噂では聞いたが、当該事件との因果関係はわからない。浜宿海岸にまつわる言い伝えなども特に無く、その事件以外はいたって平和な土地であると住職は語る。





浜宿海岸入り口の正面近くに住む主婦によると、1982年の事件以降も以前と変わらず夏は海水浴客で賑わっていたらしい。だが、もともと海の家などの施設がないために遊泳客の数は少なく、今では入り口が閉鎖されている。近所に大規模海水浴場ができたこともあって泳ぐ人はいない。

白子町牛込に在住のYさんは長年に渡り浜宿海岸の自然保護活動をしており、現在も千葉県の依頼で活動をしている。当時の事件と噂について次のように語る。

「事件について良く覚えている。しかし20年近くも昔の事でもあり、幽霊など見た人など実際にはいない。海岸閉鎖は浜宿海岸に生息するコアジサシやウミガメなどを保護する為に車の進入を禁止したために浜宿で泳ぐ人が居なくなったためだ。事件とは何も関係ない」

付近住民は子供から大人まで当時の事件と幽霊騒動について知ってはいるものの、実際に目撃した人物につながる情報はなく、あくまでも噂でしかないようだ。

では浜宿海岸の入り口から30mほどの場所に立つ鳥居の撤去問題とは関係があるのだろうか。

海岸入り口に面する県道 飯岡〜一宮線は1980年頃から千葉県と白子町が共同で工事を始め、同時に自転車道の整備も行われた。海岸線の道は元々広く大規模な拡張工事はしていない。当時、鳥居は木製であったが、道路整備中に現在のコンクリートに立て替えたのかもしれないが、確認は取れない。





結局、3件の焼身事件の事実は確認は取れたものの、幽霊目撃については重要な証言を得ることはなかった。
白子町と言う土地にまつわる言い伝えに「元禄の大津波」と言われるものがあり、元禄時代に浜宿海岸近辺を大津波が襲い多数の犠牲者が出たといわれている。その時波が引いた後に遺体が残った場所に墓地が立った。しかし今回の事件に結びつく手がかりはない。戦時中も特別な被害もなく、爆撃機は頭上を通りすぎるだけだったという。

しかし着眼点を焼身に絞ると、以下のような関連性が出てくる。1982年はホテルニュージャパン火災と羽田沖 日航機墜落事故があった年だ。

ホテルニュージャパン火災 死者33人  2月8日
羽田沖 日航機墜落事故  死者24人  2月9日

このような事件事故は希であり共に炎に関係する。ちなみに亡くなった3人の生まれた年にはニューメキシコで世界初の核実験が行われた。

焼身自殺とはもっとも苦しい自殺と言われ、死に至るまでの時間が長く、体が燃えていても意識が途切れない。仮に生き延びたにせよ、その後遺症は他に比類無き悲惨なものという。そのような事から焼身自殺は死を持って訴えたい人が使う手段でもある。

カルト教団による集団焼身自殺などもそうであり、かの石原都知事も1999年7月25日に「首都が移転すれば焼身自殺する」と発言している。仏教の世界でも若干ニュアンスが違うが「兎の話」という焼身の話もあり、亡くなった方が霊となり我々にメッセージを送ることがあるのではないだろうか。