大観屋敷


FC 名古屋西

岐阜県恵那市の「恵那狭」という場所に、古い廃ホテルがある。
ここは渓谷で地元ではちょっとした有名な場所で、自殺の名所でもある。
この廃ホテルは、いろんな地元情報があり心霊スポットとして恐れられている。
噂とは、古いホテルにありがちなもので、自殺した経営者の霊が出るというもの。
実は調査員自身もこの場所には10年以上前行った事があるので、まずはその時の話からしていきたいと思う。

地元の噂を聞きつけ、好奇心のあった当時の私は、友人4人でこのホテルに訪れた。昔、このホテルの経営者が自殺したらしく、その霊が現れるとして近所の住民も近寄らないということだった。
外観を見ただけもすごく不気味だったのを、今でもはっきり記憶している。
ホテル内に入ると、昼間だというのに真っ暗で異様な雰囲気だった。布団は散らかり放題、血痕のようなものもある。
さらに不気味なのは、いろんな動物の剥製だった。
大きな実物大の剥製や首だけの剥製が吊り上げられているのだが、噂によると、夜になった時この剥製達が動き回り、動物の泣き声や走り回る足音が聞こえるというのだ。
動物の声といっても犬や猫のものではなく、正に剥製達の雄叫びの様な声なのだそうだ。また壁に掛けてある首だけの剥製からは、首から血が流れ落ちるという目撃もあったらしい。

あまりの不気味さに、その日は帰る事にした。
次の日の昼間、もう一度訪れてみた。すると明らかに前日とは剥製達のいる位置が違うことに気づいた。
1階にいた大きな動物達が3階まで来ている。数体の剥製のすべての位置が違う。 誰かのいたずらだという可能性もあるが、何10sもある剥製を何体も、しかも1階から3階まで移動するというのは決して容易な作業ではない。
「夜動物達が動き回る」という噂が頭に浮かび、気分が悪くなりこのホテルを後にした。

それから10年以上、気にはなっていましたが、不気味なのでそれ以来近寄ってはいない。
ただ、その後風の便りで私の聞いた話では、この場所で行方不明になった若者が何人かいて、警察が捜査もしたとの事で、最近は通行止めになっているとの事だった。

今回、再びこの地に足を踏み込もうと、当事務所スタッフと現地まで訪れた。しかしそれらしき建物が見当らない。
確かにこの場所だと記憶しているが、その地は森になってしまっている。
近所の聞き込みを行うが、

「大観屋敷?う〜ん。聞いた事ある様な?」

という頼りない答えばかり。
数十人への聞き込みの結果、次の答えが返ってきた。

「私は地元民なので良く知っていますよ。地元の人たちの間では「大観屋敷」 と呼ばれています。なぜ大観屋敷というのかは知りませんけど、怖いですから私は近寄りたくありませんよ〜」

と指差した場所は、先程訪れた森??疑問に思いつつ、先程の森へ戻ってみる。森のさらに奥へ進むと、確かに「大観屋敷」はそこにあった。
辺りには妙な雰囲気が漂い、あきらかに異様な感じがする。そこだけ空間というか空気がおかしい。
その時突然、スタッフのうちの1人が吐き気を催し、頭痛を訴え座り込んでしまった。これ以上調査を続けられる状態ではなかったため、しかたなく近所のバス停で 待機させることにし、私は1人、10年経過した建物と再会することを決心した。
大観屋敷はそこからわずか、100mくらい森の中に入った所にあった。
入り口は二つの石の支柱でできており、当時は無かった金網が張ってある。



警察が貼り付けた「立入禁止」の立て看板もあった。警察の捜査が入ったという噂は本当だったらしい。
汚い落書きも有り不気味な雰囲気を掻きたてる。 あまりの恐ろしさと、後ろに誰かがいる様な不気味さに中へ入る勇気が無くなり、帰ろうかとも思ったが、 調査のためと思い直し中に進む。
入り口の金網の柵は簡単に飛び越えられる高さである。中にはアスファルトで出来た道が右方向に進んでいる。
入り口からは見えなかった本殿が見えた。昔の面影はあるものの、10年ぶりに見る建物は、更に不気味さを増し、今にも崩れ落ちそうだ。



左側の屋根は腐って落ちそうになっていた。
事務所の跡でしょうか、手前の右側に1台の車が突っ込んでいる。
その車には、大きな文字で「大観宮」と書いてあった。これでなぜ大観屋敷というのかが判明した。
本殿には昔足を踏み入れた地下室等があるが、今にも崩れそうな雰囲気だったので進入は断念し、 外から中の様子をうかがう。昔と同様布団はちらかり放題で荒れている。ただ、例の剥製達は見当らない。



その後の聞き込みで、昔、宗教団体の集団自殺があったという噂のあったことが分かった。
その真偽を調査してみると、集団自殺したといわれる宗教団体自体が、ねずみ講業者の主宰である事が判明した。その団体が倒産、もしくは金銭的なトラブルを起こした事による何らかの事件は確かにあったようだ。警察がパトロールに来ている事も、この事件が理由だろうか。
いずれにしても、車のナンバーがまだ岐阜5というかなり古いルーチェである事からかなりの年数が経っているものと思われる。
建物の状態からも倒壊等のリスクがあると判断し、調査を終了する事を決めた。

最後に、これは個人的な疑問なだが、大観屋敷から見ると上を走る恵那峡線の道路ははっきり見えているのに、恵那峡線からは大観屋敷はただの森にしか見えないのは少し不自然なように思われる。
やはり、何か不思議な力が働いているのだろうか?