FC 北勢
東名阪自動車道 四日市ICより国道477号線を車で20分ほど西へ進むと、全国的に有名な三重郡菰野町「御在所岳・湯の山温泉郷」へとたどり着く。
多様な高山植物、標高1212mのロープウェイ、秋には紅葉、冬にはスキーと四季を通じて見所の豊富な御在所岳。
傷ついた鹿がこのお湯で傷を癒したところから別名「鹿の湯」とも呼ばれ、県内のみならず全国からも客足の途絶えることのない湯の山温泉だ。
山岳寺に折鶴を奉納すると恋が成就するという「折鶴伝説」もあり、観光客、温泉客で賑わう一見華やかな地であるが、そこに一石を投じる不吉な影もまた存在する。
「菰野町のとある廃墟の中に入ると、近日中に必ず事故を起こす」
などといった噂を10代から30代の男女の間でよく耳にする。
今回心霊スポットを取材するにあたり、私はその現場を実際に訪れてみた。
近鉄湯の山温泉駅を左手にさらに国道を登り、清気橋を越え坂道をしばらく行くと、右手に問題の廃墟がある。
道路側に面した窓枠には全てベニヤ板が張ってあり、内部の状況は伺えない。
閉ざされた入口付近のコンクリートには焼け焦げた痕跡。
建物側面、また川に面した裏手の窓はそのままの状態になっているが、そこから覗くカーテンには引き裂かれたような亀裂が入っている。
クリックすると拡大画像が見られます。
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まだ強い西日の差す午後4時過ぎである。
私の背後の山肌からは、今までに聞いたこともないような虫の音。
思わず全身に冷たいものが走る。
我に返り、すかさずレコーダーに録音するも、その虫の音だけが入っていない。
やはり薄気味悪さを感じずにはいられない。
しかし、ではなぜ前述のような噂がのぼるに至ったのだろうか。
火のない場所に煙がたつはずもない。
現場付近での聞き込み、体験者の話などをもとに事実関係をたどっていくと、以下のような事柄が明らかとなった。
・ 平成10年9月19日21:30頃、肝試しに来た近所の男性5名が、同建物内2Fにて死後3ヶ月程経過した男性(身元不明)の腐乱死体を発見。
・平成13年に入り、同建物内にてボヤが発生した。肝試しの少年達によるもの。
それ以後、入口及び正面側の窓は封鎖された。
また、
・平成11年5月、三重郡部に住む男性3名、愛知県内にて事故。車両大破。
・平成11年8月、四日市市内に住む男性4名、同市内にて事故。堤防より転落。
・平成11年9月、鈴鹿市内に住む男性5名、四日市市内にて事故。車両大破。
・平成12年1月、四日市市内に住む男性4名、鈴鹿市内にて自動車事故。
4名重傷、車両大破。
これらは全て同建物に立ち入った者の事故である。上記のように、立ち入った者はその当日、もしくは2~3日後までには何らかのかたちで事故を起こしている。
この他にも6件の事故例を聞いているが、それらを確認するには至っていない。
今回の話、読者の皆様はどう感じられるのだろうか。
多発する自動車事故の原因、それは肝試しを終えた若者の高揚感、安堵感からくるものなのか。
それとも、不幸な死をとげた浮浪者の霊魂が招くものなのか・・・。
いずれにせよ事故が起こっているのは事実、浮わついた動機で訪れる場所ではないようだ。
私はシートベルトをきつく締め、霧がかった温泉地を後にした。
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