病院側はインターンの犯行に激怒し、すぐさま警察署に収監させた。
 彼女の死体はふたたび霊安室に戻されてから清められ、翌日の出棺を待つばかりとなった。
 話の長い刑事さんに事情を説明しているうち、気がつくと、とっぷりと日が暮れていた。
しかし、まだ仕事は終わっていない。遺族に事件の報告をしなければならないのだ。
これが終わらないと、残りの調査料がもらえない。
 S課長と、霊安室の左隣にある詰所で紙コップのコーヒーを飲みながら待つことに
なったが、内線が鳴り、遺族が到着したことを知ると、彼はそそくさと詰所から出て行った。
 三○分・・・一時間・・・。
 彼はなかなか戻って来ない。三畳ほどの殺風景な詰所には、時間を潰せるようなものは
何も置いてないので、だんだん苛立ってきた。
 部屋の外に出ると、非常灯のわずかな緑に照らされた細長い廊下がのびていた。
誰もいない。おまけに隣は霊安室ときているものだから、ブルッと背筋が寒くなって、
しかたなくまた詰所の中に引っ込んだ。
 折りたたみ椅子に座り直し、冷たくなったコーヒーをすすっているとき・・・。
 壁の向こう側から、シクシク・・・シクシク・・・と、女のすすり泣く声が聞こえてきた。
『冗談じゃない!』。直感で、彼女にちがいないと思った。
 インターンに屍姦された恨みなら、お門ちがいである。それとも逆に、
インターンに恋してしまって、彼を捕らえた私を恨んでいるのか?
 裸電球がスウッと暗くなる。