「おかしい」と思ったのは、電車の到着を告げる音を聞いた時である。メロディがおかしいという感じではないのだが、なにかすごく嫌な感じがするのである。明るいメロディのはずなのにどこか不安にさせるというか・・・。やはり、この音に何かあるのだろうか。
いろいろと考えていると、何回目かの発着音が鳴ったとき、ふとベンチの隣に腰掛けていた知人が立ち上がった。そしてフラフラとホームの方に歩いていく。
「・・・? まずい!」
そう思った私は、とっさに知人の手をつかんで引き止めた。が、知人はそれに関係なしに歩こうとする。
「おい!」
私はあせって思いっきり手を引っ張り、知人を後ろに戻してそのままベンチに強引に座らせた。
ベンチに座った知人はハッとなって私を見た。