●更新日 06/01●

働く人の憂鬱シリーズ 〜ホーム・ヘルパーの憂鬱〜


様々な業界で働く人がいます。ですが、その業界に身を置く者にしか解らない裏話も沢山あります。興味があっても、「実情はどうなんだろう?」という不安を持つ方々の質問にお答えするこのシリーズ。
今回は、身体の不自由な方やご老人のお世話をして下さる「ホームヘルパー」さんにお話を聞いて参りました。
それでは早速インタビュー開始です!





どんな仕事?
X:介護保険法で定められたケアマネージャーが作成する「ケアプラン」に沿って、要介護認定を受けた利用者様のお宅へ介護をしに行きます。

きっかけは?
X:ケアマネをしていましたが、利用者から上がってくるクレームの殆どが、質の悪いヘルパーに関する事でした。プランを潰されるのなら、自分が現場へ行こうと。

魅力は?
W:発展途中の業界です。高齢者に限って言えば、これから爆発的に利用者が増えます。これからのビジネスチャンスと考えられるかもしれません。
X:目上の方に、「アンタが来てくれるのを秒針を見ながら待ってるよ」と言われます。人に感謝される仕事って、とても尊いです。いつも感謝される仕事って、中々ないですよね。

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内情は?
W:ホームヘルパーの資格だけでは話になりません。施設にもよりますが、正職員で15万くらい貰えたら上等。それ以下はざらです。パートだったら時給750円くらい。夜勤や宿直があるのでその手当てが別で支給されます。
仕事内容は働く施設によって本当に違います。大きく精神的ケアが重視される施設と、身体的ケアが重視される施設に分かれます。
身体的ケアの施設は体力勝負です。1日に何回オムツを換える、とか決まっているので時間内に40人分のおむつ交換、シーツ交換等々をしなければなりません。
精神的ケアはケアする側の精神も壊れる危険性があります。自分をしっかり持たなければなりません。
X:正社員は責任者で相場は22万程度。そこから色々引かれます。残業してもつかない所が多いですね。
登録ヘルパーといって、直行直帰、時間分だけ給料を貰う人は、移動時間は含まれません。その代わり交通費が出ます(時給に含まれている所もあり)。
明らかに在宅介護レベルでなくても、病院や家庭の事情、お金の事情などで無理やり在宅になっているケースもよくあります(癌の末期、徘徊レベルの痴呆、虐待等)。

知っておいた方が良い事
W:汚い事がダメな人には向いていません。また、顔や髪にうんこを付けている人を見ても驚かない事。
人の死に目に遭います。
X:利用者の方は介護認定を受けています。主治医がいて、疾患を持っていると言う事です。自分から知識を身につける気がなければ、向上はできません。
事業所がしっかりと指導してくれればいいのですが、例えば透析を受けている方に食事を作る仕事があったとする。何も考えずに作ってしまったら?
資格自体は(ヘルパー2級)試験無しで取れます。講義を受けて、レポート出すだけの所が多いですが。
でも、現場では1人で判断して動かなければなりません。とても責任が重いです。

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「あぶない!」と感じた時
X:精神疾患を持つ息子さんと同居されているおじいさんの所へ行きましたら、40代の息子さんがこちらをみながら、何故かナタを研いでいました。目が合うと、へへっって、笑いかけられました。背中を見せない事だけに集中した1時間でした。

秘密の事
W:医療行為です。目薬や、坐薬などは医療従事者にしか許されていない行為です。また薬を口に入れる行為もダメです。同じ様な事では、痰の吸引とかもダメです。でも、そんな事を言っていたら仕事になりません。
また、身体拘束や暴力です。「金払ってんだからそんな事やって当たり前だろう!」と怒鳴られて、うんこの付いたオムツを投げられたり、噛み付かれたり、殴られたり……。我慢できなくなるのも仕方ないような気がします。
X:認定を受けた利用者本人以外への世話や家事は禁止されていますが、「つい」という事が多いですね。

良かったと感じた時
W:痴呆があって上手く意志を伝えられない人等の訴えや気分が解った時です。これは本当に勉強をしていないと簡単に理解できないと思います。ケアが上手くいくと、とても穏やかな生活を送るようになります。
X:お亡くなりになった後、「あなた達のおかげで、家で思う通りに介護ができました。ありがとう」と家族の方に言われた時。

笑い話・苦労話
W:「これあげるわよ!」ってうんこ投げられた事があります。
X:ある時、利用者様の所へ行ったら、お顔がサンドバッグになっていました。同居の家族に虐待を受けたのです。一目見て誰でも解るのに、「転んだと言えと言われた」と。
訪問したら意識不明、痙攣発作なんて時も。友人は第一発見者になってました。

その他
W:家族介護から発生した業界なので「主婦ならできる」と思いがちですがそれは全く違います。そんな考えでケアしていると傍目には解らないかもしれませんが、痴呆はドンドン進んでいきます。痴呆は治らない病気ですので、進行を遅くする以外に方法はありません。
ご自分、もしくは大切な人を施設に預ける時が来たら、施設をよく見て、スタッフを良く見て、他と比べる事をお勧めします。
X:無試験で資格をとったら、すぐに1人立ちできる仕事です。自分が「できる」と言えば、仕事を任されてしまいます。
勘違いで「あたし有能だし!」と言っている人、沢山見かけます。
急に「今日は冷蔵庫の中のもので何か作って」とか言われます。老人の好みそうな料理を勉強しておいて下さい。
苦労して人生を重ねて来た方たちが、少しでも幸せな晩年を過ごせるよう、一緒に頑張りましょう。



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