「今まで靴を磨いたことは？」
「一度も無いですね。」
「リペアショップや靴磨き屋さんも？」
「行ったこと無いです。」
どの靴も艶が無く傷み放題。これはまだマシなほうだ。
「お金持ちだしおしゃれですよね？」
「おしゃれですよー」
どこが。
反論しても仕方がないので、靴の磨き方を教えた。
柔らかい馬毛ブラシでホコリを取っておき、ステインリムーバーで下地作り。
古いクリームや臭いの元である脂、汗などを除去。人で言うとクレンジング。
さっと拭くだけでいい。よく履く靴なら週に一度は行いたい。
次に、保革クリームで汚れ落としとツヤ出し。靴全体に薄くのばしていく。ゴシゴシこすらない。
そして栄養を与え潤いを保つシュークリームを塗る。傷んだ部分を念入りに。
油性のポリッシュを使うときは数滴の水を落として転がしながら磨くとより艶が出る。
柔らかい豚毛ブラシで馴染ませていく。毛先に靴が触れる程度に優しくブラッシング。
最後は綿布で乾拭きして仕上げ。
「すごいですね～ＢＯＺＺ。こんなキレイな靴だったんだ！」
依頼人が目をキラキラさせて違う靴を出してきた。
もう逃げよう。
これ以上長居すると部屋の掃除までやらされそうだ。
私は普通の風水鑑定がしたいだけだ。
BOZZ（渡邉文男）