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『少女はなぜ逃げなかったのか 質問者への回答』精神科医ヤブ

「千葉監禁事件と象の鎖」の記事、拝見致しました。
「なぜ逃げなかったの?」という考え方を実は私も持っています。
誘拐当初、加害者から「捨てられた」と被害者は言われ続けたと報道にあります。当時中学1年生(13歳)という年齢を考えても、見ず知らずの他人から「捨てられた」と言うのを信じるものかすごく疑問に感じました。少なくとも、母親や父親に真偽を確かめようとは思います。
やはり、「自分からは逃げなかったのでは?」という疑惑は個人的には拭いきれておりません。 (N美さん メールは一部省略)


フィクションの世界であれば、主人公の少女はあらゆる手段を使って逃げ出すだろう。というより、フィクションではうまく逃げ出す人を主人公にしてある。逃げることに失敗した人は主人公にはなれない。

特に現実の世界では、失敗は死を意味する。実際に殺されるかどうかではなく、「殺されるかもしれない」という現実的な恐怖感を抱く。そんな状況で、加害者の言葉の真偽を冷静に確かめることなどできるだろうか?

世の中には少年少女が死体となって発見される事件が多々ある。彼らは「逃げようとした」かもしれない。だが、ニュースになるのは「死体が見つかった」という結果だけ。この少女も、もし逃げようとして殺されていれば、少女誘拐殺人事件として報道され、ここまで注目を浴びることもなかったはずだ。奇跡的に逃げ出せたからこそ、主人公として目立ってしまい、逆に質問者のような憶測を招くことになってしまう。

13歳という年齢も重要だ。一般に、9歳から10歳過ぎで「死」の不可逆性、身体機能の停止、普遍性が分かるようになる。誘拐されたのが小学校1年生なら、死を恐れずに逃げようとしたかもしれない。過去には新潟で少女が9年間も監禁される事件があったが、被害者は誘拐当時9歳であった。死の恐怖という呪縛は、安全地帯で想像する以上に強力なものなのだ。

 

 

ヤブ 

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