前回のつづき。
先刻の警戒行動が何かの間違いであってくれと思いながら、対象者が勤務先から出てくる瞬間を調査車両の中で待つ。
21時半を過ぎた頃、対象者が勤務先から出てくる。一気に車内が緊張に包まれる。
勤務先から少し離れた駐車場に駐車してある、対象者使用車両へ向かう対象者。周囲を気にする様子はないものの、スマートフォンはしっかり操作している。
「やはり、今夜接触があるな」
長年の経験がそう告げる。
対象者の車両が発進。しばらく大通りを走行した後、住宅街に入って行く。
住宅街の一角で車両が停車する。どちらかといえば急に脇に寄せて停車したように見えた。接触者が現れるでもなく、対象者が降りるでもなく、すぐに発進する。
我々の脳裏に再び「警戒」の文字が浮かぶ。
さらに対象者の車両は右左折を繰り返しては停車、停車しかけては発進するなど、明らかに警戒行動を取った。苦渋の想いで決断し、尾行を打ち切る・・・
依頼者に状況を説明して、対象者が帰宅した時間とそのときの様子を翌日連絡してもらうようにお願いし、初日の調査終了。
車内が暗く沈んだ空気の中、不可解な想いで我々も帰路についた。
翌日、依頼者から連絡が入る。
対象者の帰宅時間は、調査を打ち切った約1時間後だった。それくらいの時間なら女性との接触はないな。接触があっても数十分会話するくらいだろう。依頼者の言葉は続く。
「それと、主人は昨日から・・・ポケモンGOを始めたそうです・・・」
・・・!!
すべての謎が解け、安堵の次に怒りが込み上げ、そして爆笑。恐るべし、ポケモンGO! 一刻も早く、ポケモンGOの熱が冷めてくれることを願う探偵であった(苦笑)
※ポケモンGOのプレイ中の交通違反や事故が多数出ています。節度を持って楽しみましょう。