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『モンスター・ハンター2~事例①』精神科医 ヤブ

医療現場で最近、「モンスター」が大きな問題となっている。モンスター・ペイシェント(患者)という言葉が定着した日本の医療界。
前回に引き続き、事例を紹介したい。

ケース1 Fさん 40代 男性

Fさんの70代の母親が肺炎になって内科に入院した。肺炎の治療は順調に進んだが、しばらくベッドに横になっていたせいで足腰が弱って、リハビリのために少し長めの入院となってしまった。親孝行で献身的なFさんは病院に熱心に通いつめ、そのせいか少し疲れてしまったようだ。

そしてFさん、ある日の日曜日にとうとうキレてしまった。
「家族が土日も休まずに看病に来ているのに、主治医が土日に休むなんてどういう神経してるんだ!!」
看護師が一生懸命なだめてもFさんの怒りは収まらない。そこで、たまたま日曜出勤していた精神科医である私が呼び出されることになった。敢えて書いておきたいのだが、精神科医は苦情処理係ではない。

イライラした様子で険しい顔をして仁王立ちしているFさんに対し、主治医は平日の早朝から深夜まで働き詰めであること、土日にも出勤することが多いが今日はたまたま休みであることを伝えた後、
「主治医が倒れてしまっては、大切なお母様の治療もままなりません。こうして時どき休んで気力・体力を充実させるのも主治医の役目なのです。どうか休ませてあげていただけませんか」
そう丁重に説明した。
「そうか、分かりました。主治医にもゆっくり休んで、明日からまたしっかり治療してくれるよう伝えてもらえませんか」
内科治療は終わっていて、あとはリハビリだけなんだけどなぁ、なんて野暮なことは言わず、「伝えておきます」と言ってサッと退散するのがミソである。


つづく

 

ヤブ

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