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ワニの胆汁入りビール?69人死亡した事件を専門家に聞いてみた

アフリカ南部のモザンビークで、乳幼児の葬儀で振る舞われた自家製ビールを飲んだ人たちが次々と中毒症状を起こし少なくとも69人死亡、196人が病院に搬送された。
乳幼児の母親の作った伝統酒の「フォンベ」が汚染されていたということだが、原因は不明という。作った母親と家族も死亡したそうだ。
報道ではワニの胆汁の混入が原因とみられているが、そもそもワニの胆汁て何なんだよ?と話題になっています。


という訳で、国際自然保護連合ワニ類専門家グループ委員のF氏に聞いてみた。

お問い合わせの件ですが、ワニ類の生体内にいわゆるフグや毒蛇のような毒は存在しません。胆汁も胆嚢から分泌される消化液にすぎないため、高濃度で摂取したりしないかぎり人間の体に毒となるようなことはないと思います。
私はワニの胆汁は賞味したことはないので味はわかりません。今回の事件はワニは全く関係ないと私は思っています。
いくつか文献をあたったところ、今回の話の出処はアフリカで古くから伝わる迷信によるもののようです。100年以上の昔から地元の人々の間で、ワニの胆汁は黒魔術に使う猛毒として扱われていたそうです。矢尻に塗ったり、お酒に混ぜたりしていたそうです。この話に興味を持った研究者が30年前にネズミと猿を使って、実験をしてみたところ、高濃度のワニの胆汁を与えても何の毒性も示さなかったとのことです。
また、私の住むオーストラリアでもワニの胆汁が毒になるとは聞いたことがありません。
イリエワニなどは小さいころは大型の鳥やトカゲ、魚にまで捕食され、大きくなってからもより大きなワニに共食いされることが珍しくありませんが、ワニを食べたことによってこれらの動物が死んだなどというのは見たことも聞いたこともありません。今回の事件ではおそらく別の毒物が何らかの理由で混入したのではないでしょうか。フォーブス誌の記事に詳しく出ていますが、おそらく植物由来の強心配糖体ではないかと推測されています。

ワニの肉は白身で美味しいです。胆汁は肝臓の横から胆嚢を取り出さないといけないので、簡単には取れないと思います。

…という訳でワニの胆汁は、原因でも猛毒でもなさそうだ。
亡くなられた方のご冥福をお祈りすると同時に、病院に搬送された方々の回復と事件の早期原因究明を切に願う。

 

土岐

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