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『渋谷立てこもり事件の真相!? ~精神科医の想像~』

去る2月7日、渋谷のマンションの14階で立てこもり事件が発生。そしてGK探偵探偵事務所の元代表、伊藤博重容疑者(47)が逮捕された事件であるが、報道によると容疑者は事件前に知人に対して、
「『イスラム国』が攻めてくる。大変だ」

GK探偵探偵事務所

といったことを話していたらしい。また男性の部屋の中は物が散乱し、なんと6千万円の残高がある預金通帳も置かれていたそうだ。

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たったこれだけの情報ではあるが、精神科医としての想像を働かせてみたい。

まず、多くの人の興味をそそるであろう「『イスラム国』が攻めてくる。大変だ」という発言から、この男性は幻覚妄想状態だったのではないかと推察する。幻覚妄想状態を呈する精神疾患の代表的なものは統合失調症であるが、この男性の妄想的な発言はあまり統合失調症らしくない。統合失調症の妄想は、もっと破天荒で奇妙キテレツで荒唐無稽だ。たとえば、ある統合失調症患者とこういうやり取りをしたことがある。

「先生、部屋で寝ている間に、宇宙人がストローを使って口に毒を入れてくるんです」
「そのストローは、どこからか伸ばされてくるんですか?」
「えっ……!?(当たり前じゃないかという顔をして)宇宙に決まっているじゃないですかぁ!!」
「それだと、天井とか屋根とか邪魔になりません?」
「えっ……!?(当たり前じゃないかという顔をして)だって宇宙人のテクノロジーですよぅ!!」

こんな話は100人中99人が一笑に付すだろうが、信じる者が1人だけいる。自分自身だ。

さて、こうした宇宙人や電波攻撃といった典型的で滑稽とも言える妄想に比べて、「イスラム国が攻めてくる」というのはどうだろうか。日本人2名が斬首された直後でもあり、また実際にイスラム国が日本もテロのターゲットにするのではないかという説もある今、妙に地に足のついたというか、しっかり時事ネタに則しているというか、聞く人によっては「ただの妄想」と一蹴するには気になれない内容ではなかろうか。こういう妄想は、統合失調症の人には絶対にない、とまでは言えないにしてもそう多くない。

こうした「一部の人にはあり得る話なのかもしれないが、普通の人はそんなこと思いもしない」というタイプの妄想には「警察に追われている」「政府機関から狙われている」などがある。では、どういう人にこの手の妄想が多いのか。それは覚せい剤の使用者である。使用回数は数回から常習者までと、妄想を発症するまでの感受性は人それぞれだが、覚せい剤使用者が抱く妄想には、後ろめたさが手伝ってか、こういう内容のものがよく見られる。

もちろん、統合失調症でも上記のような現実にありえそうな妄想を抱く人はいる。ただし、統合失調症の好発年齢は10代後半から30代前半で、それからすると47歳というのは統合失調症を発症するにしてはやや遅めである。では、若い頃に発症していた可能性はあるだろうか。

そこで気になるのが、この男性の家にあった6千万円もの大金が入った通帳だ。ごく一般的に言って、若い頃に統合失調症を発症した人が47歳時点で6千万円の貯金をしている可能性は極めて低い。あるとすれば遺産相続などの不労所得か。

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(写真撮影・提供:相原氏)

こうした情報を組み合わせて至る結論は、限りなく「統合失調症らしくない」ということであり、もっと踏み込んで言えば、もの凄く「違法薬物のにおいがする」ということだ。

言うまでもなく、これらはたった3つの情報から想像を働かせたに過ぎず、今後の続報を待たなければ正確なところはまったく分からない。

え? 薬物絡みくらいは素人でも想像がつくって?

それもそのはず。精神医療に関わることの多くには、予想外のことやドンデン返しなんてほとんどない。ごく一般的な常識感覚の中に、ほんの少しの狂気が混じっただけなのだ。

 

精神科医ヤブ

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