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『ちょっと待ってちょっと待って、キングコング西野さん』岡田斗司夫

お笑い芸人・キングコング西野亮廣さんは「画を描くアーティスト」としても有名だ。
ニューヨークでの個展も成功させ、彼の描くイラストは一点数十万で取引されている。

その西野さん、次回作では「絵本を完全分業制でつくる」「資金はクラウドファンディングで集める」と宣言した。
しかし、この西野さんの発言、僕にはピンとこない。

************(BLOGOS 6月3日記事より)発言引用********************************

これまでの僕の作品は全て、西野亮廣個人が一人で文章と絵を担当してきました。誰の力も借りずに一人で作った方がカッコイイと思っていたので、分業制のことなど考えもしませんでした。

しかし、経験を重ねていくうちに、「誰が作ったか?」ではなく、「何を作ったか?」が大切だということに気がつきました。

「ベイマックス」の監督さんの名前なんて、ほとんどの人が知りません(監督は2人いるそうです)。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」の脚本家さんの名前なんて誰も知りません(脚本家は4人以上いるそうです)。

ただ、その作品のことは世界中の人が知っています。その作品は世界中の人達をドキドキさせています。

絵本でも、それができるのではないか? 日本のクリエイターさんが絵本を舞台に力を合わせれば、誰も見たことがない、世界中がドキドキするような作品を作れるのではないか?

というわけで、日本のイラストレーターさん達と手を組んで、完全分業制で制作する「世界中をひっくり返す絵本」を作りたいと思いました。

************引用おわり(BLOGOS 6月3日記事より)********************************

絵本を多人数で作る試みは、すでにある。
たとえば子ども向けの童話絵本、それも最近のアニメ絵のはぜんぶ分業制だ。
「ももたろう」「かぐやひめ」「一寸法師」などを実際に書店で探してみて欲しい。
それらほとんどが、アニメ絵で完全分業制で作られている。

もともとは「個人の作家がひとりでぜんぶ仕上げるモノ」だった絵本は、1990年代あたりから完全分業化がはじまった。
乗り物や昆虫などの子ども向け図鑑は、1人の作家が描いている作品のほうが珍しい。
いまや大人向けの絵本以外は、完全分業制で当たり前なのだ。

ではなぜ大人向けの絵本では分業制がメジャーにならないか?
答えは簡単、「作家性が失われるから」。

マンガ家でも絵に対する作家性が強い人は、アシスタントが少ないとか、使わない傾向がある。
映画監督も同じ。作家性が強い監督は、スタッフ数を絞って「家族的な環境」を望む。
アニメ監督の新海誠さんはデビュー作『ほしのこえ』で、監督・脚本・演出・作画・美術・編集などほとんどの作業を一人で担当した。

絵本の世界でも、大手出版社の量産する「アニメっぽい絵本」は作家性などどこ吹く風、完全分業制が当たり前。
でも小さな出版社、作家性の強い絵本を出す出版社では、作家ひとりがぜんぶ担当する。

キングコング・西野さんはきっと「作家性の強い、大人向けの絵本」ばっかり見てるんだと思う。
本当に絵本を必要としている子供たちを育児した経験がないのに、カッコいい絵本ばっかり見てるから、ついつい「絵本には分業制がない。じゃあオレが世界初の!」とイキってしまうんだろう。

逆だ。
というより、時代遅れだと思う。

芸人さんが他業種に参入するとき、やりがちな失敗は「各界の一流スタッフを集めて、オレが総指揮すれば」だ。
オリエンタルラジオの中田さんも、その手法で映画を撮ろうとした。
放送作家、スタジオ、ライター、PR担当・・・
超一流のスタッフを集めて、何度も企画会議して、映像作品を作った。
結果は、大失敗だ。

それに対して、北野武、劇団ひとり、バカリズムなど映画で一定の評価を得ている芸人さんは、みんな「自分1人でやれる範囲」を探りながら作っている。
映画のようなスタッフワークが当たり前の世界ですら、自分1人で動くのが鉄則だ。
それに対して絵本は、完全分業がメリットになりにくい世界なのに。

それにクラウドファンディングなど使わなくても、西野さんの原作や文章が本当に素晴らしければ、ギャラなど後回しで参加するクリエイターは多いはず。
クラウドファンディングとは、作品を作ること自体に膨大なコストのかかるアニメや映画、または工業製品にこそ向いている方式なのに。
なんで「コストの低い絵本作り」にその手法を使おうとするんだろうね?

キングコングの西野さんは、クリエイティブではなく企画段階で、もっと優秀なスタッフを探して討議を重ねた方がいいと思う。



岡田斗司夫

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