フランス・パリ中心部の劇場やレストラン、郊外の競技場などで13日夜、同時多発的に発生した銃撃や爆発などのテロ事件はフランス国民を震撼させた。15日の時点で129人が死亡、約300人が負傷した。オランド大統領は14日、テレビ演説で「過激派組織・イスラム国の犯行だ」と断じた。犯行動機は解明されていないが、9月下旬に、フランスがシリア内イスラム国支配地域を空爆したことに対する報復と見る向きが多い。
大惨事としかいえない凶行だが、テロ事件を事前に警告する声が仏国内にはあった。
「イスラム国・空爆はテロを拡散する」と警鐘乱打していたのがドミニク=ドヴィルパン元首相だ。ドヴィルパン元首相はジャック=シラク大統領の秘蔵っ子として同政権で外務相、内務相、首相を歴任し、イラク戦争開戦前の2003年2月14日に、国連安保理で仏外務相としてイラク戦争に反対する歴史的名演説を行ったことで知られている。
ドヴィルパン氏は昨秋テレビ番組に出演し、
「空爆にフランスが参加することでわたしたちはますます危険にさらされることになる。これは明白な事実だ。空爆によって世界各地に散らばるテロリストをわが国に呼び込むことになる」「軍事介入はテロリズムを育成・醸成する」
と述べた。
パリ市オペラ座前の夜景
反テロ行政の長を1980年代に務めた最大野党・UMP(民衆運動連合)のアラン=マルソー国民議会議員も昨秋、
「今回の軍事介入はフランスを危険にさらすことになる。わたしたちはイスラム聖戦士たちの標的・敵になる恐れがある」
と懸念を示した。
一見、突如として起きたかのように見える凄惨な事件だが、何人かの有識者は事件を事前に予見・警告していたことがわかる。あるパリ市民は
「ドヴィルパン氏らの警告通りになった。さらなる事件が起きないか心配だ」
という声も出た。
アンリ