夜、彼女が家に来た。出張続きだったので、会うのは一ヶ月ぶり。
せっかく来てもらったのだが、自宅での作業が残っていたので、自室にこもる。
彼女が「何かすることない?」と尋ねてきたので、クリーニングの仕分けを頼んだ。
ー 10分経過 -
「じゃあ、帰るね」
彼女の態度がおかしかった。
「どうして?」
私が忙しそうなので、遠慮して帰るのかな、と思った。
と、その瞬間
思いっきり、黒いシャツを顔に叩きつけられた。
「な、何だよ!」
「そこのローソンの袋に入ってたわ、どうしてよ!」
「え?」
黒いシャツは
女物だった。
私は正直、狼狽した。
あるはずの無いモノが、今、そこにある。
なぜだ・・・・しかも、なぜ、ローソンの袋に入っているのだ。
私は沈着冷静さを装い、ローソンの袋をおそるおそる調べた。
黒いネクタイ・・・・私のだ。
カンタベリーのシャツ・・・・これも私のだ。
じゃあ、どうして女物のシャツが目の前にあるのだ?
下着じゃなくてよかった。
と、そんな冗談を言っている場合ではない。
ん?待てよ、これは確か、二週間くらい前に、事務所の配置換えがあって、園田が私の机の周りの不要物を詰め込んだ時の袋だ。
謎が解けた。
きっと園田は、事務所のハンガーから、黒いシャツは俺のモノだと思い込んでローソンの袋に詰めたのだ。
玄関からまさに出ようとする彼女を制止し、急いで携帯電話で園田と連絡を取った。
「そ、園田、おまえ、この前、お、俺にローソンの袋を持たせたよな!?」
「え?・・・・あ、はぁ」
「はぁじゃねえよ、ほら、おまえの机が俺の隣になった時だよ!」
「あ、はい。」
「そん時、女物のシャツ入れたよな!?」
「・・・・・・・」
「シカトすんじゃねぇよ。何を入れたか覚えてるか!?」
「えーと、黒いネクタイと、青い服と、グレーっぽいシャツでしたけど、確か」
グレーじゃなくて黒だろ!!黒っ!!
「はぁ・・・・」
「はぁじゃなくて・・・さぁ、よく思い出そうよ、な、頼むよ、今、彼女に疑われてんのよ」
「えっ!!そうなんですか、すいませんっ黒でした、黒っ!!」
・・・・・・おまえってやつは
公私ともに俺に迷惑かけやがって。
【公開捜査】
全女子社員のみなさまへ。NEWAGE社製の黒いシャツです。少し光沢があります。
持ち主の方は、速やかに名乗り出てください。
って言うか。
なんでシャツを脱いで帰るのよ。
-瀕死のBOSS-