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リアル都市伝説~私は“人間ちり鍋”を見た!!(後編)

昨日の続き。


Aさんの教室の場合、通常の行政検死(病死か外因死つまり事故や他殺かを調べる検死)では、遺体を大学に搬送して行うことが多い。
管轄地域が広い為、解剖することを考えれば搬送した方が手間が省けるからだ。

逆に司法検死(明らかに病死ではない場合の検死)では、特に事件性が高いと判断されれば、現場で簡単な検死を行ってから大学で解剖することが多いとのこと。

Aさんは警察官に、
「犯罪がらみの状況なんですか?」
と聞いたところ、彼は黙って首を振った。

つまり、“何らかの理由”で現場から運び出せない遺体ということだ。


現場はいまだ熱気と湯気がこもっており、表現し難い強烈な臭気に満ちていた。

湯船のそばに立ち遺体の全景を見た瞬間、最初は“それ”が何なのかわからなかったそうだ。


頭部から胸の半ばまでは煮立った湯気に燻され続けた為真っ赤に晴れ上がり、皮膚はほとんどズル剥け、元の顔貌は全く想像できない。
胸から下は数日掛けて茹で上げられた為、組織が脆くなっていたのだろう。
胸と腹に収められている臓器の重みに耐えられなかったのか、腹壁が真ん中で裂けており、内臓も、それを支える支持組織も、脂肪も、全てが湯船の中にぶちまけられていた。

ドス黒く煮上げられた自らの内臓達を、犠牲者のうつろな眼窩が見つめていた。

四肢は完全に煮とろけ、骨さえも関節が外れて風呂底で揺らめいている。
油の表面にはギトギトと溶けた脂肪と煮えたぎった血液の塊が浮き、ぼろきれのようになった皮膚が、その間を海草のように漂っていた。


そこまで観察し、Aさんはあることに気づいた。
その瞬間、猛烈に吐いたそうだ。
死臭、脂肪や内臓特有の臭み、生肉の煮蕩けた匂いと表現し難い様々な臭気。
その中に、Aさんは微かに覚えのある匂いの要素を感じたという。

それも、普段“食べ物のおいしい匂い”と認識しているものを。

 

それ以来、Aさんは“ブリのアラ煮”が一切食べられなくなったということだ。

 

探偵ファイル

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