(K支社長と調査員の会話)
北海道で“パンツ”を探すんですか?
正確には“パンツの中身”だ。
ストーカーじゃないでしょうね?
ちがう。
じゃあ、なんでパンツ?
そりゃ本当は彼だって、彼女に交際を申し込みたいというのが本音だろうさ。しかし、自分のようなものがそれをしたところで、迷惑になるかもしれないと考えている。シャイで、引っ込み思案な青年なんだ。
だからって、なんでパンツ?
彼にとって、その買い物を続けることが唯一の彼女との接点なんだ。それだけが心のよりどころなんだ。
彼女との唯一のつながりを断ち切ってしまいたくない。そして、それ以上のことは何も望んでいない。
でも、パンツでしょ?
ささやかな願いじゃないか。シャイで、いじらしいじゃないか。一途で、いい話じゃないか。
頑張って探してやれ。
本気で言っとりますか、支社長?
まあ、いいじゃないか。行方不明の商談相手を探し出して、取引継続を希望する旨を伝えるだけだ。
彼女がそれを断れば、話はおしまい。それはそれで仕方ない。個人情報保護法に抵触することもないよ。
そういうことなら、まあ、確かに……
それから、今回の調査には幾つか制約がある。
なんです?
まず、稼動する調査員はお前だけだ。一人で調査してくれ。それ以上は人件費がかかるからな。
同じ理由で「全国ネットワーク」は使うな。そんな費用の余裕は無い。
探偵術も制限する。金のかかる調査手法は一切禁止だ。予算が少ない。
当然、特殊情報のルートは使うな。経費がかかるからな。
あと、北海道に行くのは一回だけだ。飛行機代がかかるからな。
支社長……ふざけてますか?
大まじめだ。
メチャクチャ制約が多いじゃないですか? 探偵社としての機能を一切使うなってんですか?
まあ、そういうことだ。今回の事案では探偵社の調査員ではなく、個人の裁量で動いてもらうことになる。
北海道での人探しを大阪から……それを経費も使わず、個人の裁量で?
無制限に使っていいものもあるぞ。
なんです?
根性だ。
→続く
※次回掲載予定は全くの未定
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大阪・九坪