都内某所。
昔ここは高級住宅街だったが、バブル期に次々と買収され今はラブホテルが軒を並べている。
そんなラブホテル街の一角にある、放置された屋敷。
なぜ、この屋敷だけ放置されているのか?
聞き込みをしてみると、この屋敷にまつわる恐ろしい話を聞くことができた。
かつてこの屋敷にはK一家という父、母、三人の息子が住んでいた。
父はT大学の総長を務め、その後某県にJ大学を創設した名士だった。
しかし、この由緒正しい裕福な一家に不幸が襲い始める。
まず次男が若くして交通事故で死亡。
某一流大学卒業後、大手建設会社に就職した長男は、ある日突然出社拒否になり、精神科に連れて行くと即入院になった。
そして父の死後、この屋敷は母と三男の二人だけになる。
滅多に外出しない三男は高校卒業後、進学も就職もせず母が生活の面倒を見ていた。
このような生活は、母が80歳、三男が50歳になっても続いた。
ある日、三男が珍しく外にいるが、どうも様子がおかしい。
近所の男性が話しかけると三男は
「おなか空いたよ…。おなか空いたよ…」
そこで男性は三男に弁当を買って与え、ついでに母について聞いた
「最近、お母さん見かけないね」
すると三男は家の庭にある井戸を指差した。
「あそこにいるよ」
井戸の横には、血を流して倒れている母の姿があった…。
三男は母を絞殺してしまったのだ。
しかし、三男は母を殺したことを覚えておらず検査の結果、精神病院に入院することになった。
つまりこの屋敷は相続権を持つ二人の息子が共に精神病院に入院している為、どうすることもできず放置されているというのだ。
現在、屋敷は荒れ果て、部屋の中から、かび臭い嫌な臭いが漂ってくる。
そして屋敷にあった多くの貴重な品々は盗難されてしまったという。
今どこかの家、骨董品屋には、それが恐ろしい惨劇が起きたK一家のものだとは知らずに、飾られているものがあるかもしれない…。
リ・コウジ