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どうもイマイチな内閣改造 ~アップデート

 内閣改造が行われましたが、率直に言って、政策の観点からはどうもイマイチな内閣改造に見えてしまいます。

 そもそも内閣改造は9月頭に予定されていたのが急遽前倒しされたのですが、おそらくその理由は、統一教会問題での自民党や政権への激しい批判を抑えるとともに、それを理由に早めて岸田総理が好きな人事をやりたいということだったのでしょうが、その目標が達成されているとは思えません。

 まず統一教会については、どういう基準(どの程度の関わりまでなら入閣可能か)が不明確だったので、新内閣でも7人の閣僚、そして20人の副大臣・政務官が何らかの形で統一教会に関わっていることが既に判明しています。となると、メディアの攻撃は続くでしょうから、この点であまり意味はなかったことになります。

 次に、最も大事な政策の観点から考えると、岸田総理は「数十年に一度ともいわれる難局を突破するため」に内閣改造したと言っていますが、この言葉と人選が合っているのかちょっと疑問になります。

 今はどういう難局に直面しているか羅列すると、内政面では物価上昇への対応、今冬の電力不足への対応、足元のコロナ対応、外交面では安全保障の強化(中国、ロシア)、防衛費大幅増額、といった辺りになると思います。

 では、それぞれの問題を所管する大臣のメンツはどうかというと、まず国内問題での諸課題を対応する省庁、具体的には経産省と厚労省の大臣は、官僚がやりたい政策をそのまま実行し、かつ国会答弁で役所を守るのは上手と思いますが、政治主導で改革的な新しい政策をぶち上げて官僚にやらせるタイプではないので、どこまで改革的な方向を頑張ってくれるか不安です。

(ついでに言えば、今回の内閣改造の特徴として、気のせいか閣僚・副大臣・政務官に元官僚の国会議員が多く任命されている気がします。岸田総理がエリート好きなのか、官邸の官僚たちが仲間を大事にしているのか。。。)

 というか、そもそもこれだけ日々の買い物で買う品目の価格が上がっている中で、予算の予備費がかなりあるにも拘らず、これまでの物価高対策が4月の2.8兆円(低所得世帯や中小企業への支援)とこの夏の約2500億円(肥料代補助と節電ポイント)だけと不十分なのに、臨時国会も秋まで開かれず、噂では本格的な経済対策は11月になりそうなのです。この、経産省と財務省が官邸を仕切っているが故の官邸発の不作為を修正しない限り、いくら個別の政策を担当する大臣を入れ替えても、政策は大きく変わらないないように思えます。

 かつ、外交面の課題を考えても、本当に親中派の外務大臣でしっかりとした中国対応ができるのか、10年以上前に防衛大臣を経験した人がその頃とは様変わりの安全保障環境の中で本当に防衛費増額をはじめとした新しい課題に対応できるのかもちょっと不安です。

 そう考えると、今回の内閣改造・党人事で評価できるのは、自民党の萩生田政調会長くらいではないかと思います。萩生田さんは安倍政権での番長格だった人ですが、実際に官僚出身や東大卒のいわゆるエリート系の閣僚よりもよっぽど腹が据わった番長的な存在です。その萩生田さんが内政面と外交面の両方に党の側から関与して、絶対にやるべきと思う政策については官僚の反対を押し切ってでも頑張ってくれるのではと期待したいですが、どうなることか。。。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

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