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霞ヶ関の官僚は日本を良くする気がある?


 読者の方から「官僚がこの国を良くするような考えや動きをしていないのではないか?」というご質問をいただきました。

 これだけ酷い政策(無策)が続くと、そう思って当然ですよね。しかし、霞ヶ関のどの省庁の官僚も基本的には日本を良くしたいと考えています。問題は、それが必ずしも“日本全体”ではないことです。

 というのは、各省庁の所掌事務(権限の及ぶ範囲)は法律で厳格に決められているため、官僚は自分の役所の所掌の範囲でしか政策を作れません。だから、政策が官僚主導になると、個別の分野を良くする政策の集まりになってしまうので、必ずしも日本全体を良くすることに繋がらないのです。

 例えば、厚生労働省が年金改革法案を準備していますが、その内容(現役世代のサラリーマンや企業の負担を増やして年金の水準を維持)は日本全体の観点からは論外です。でも、厚生労働省の所掌は社会保障制度だけで、家計の負担(税+社会保障)や消費といった観点は所掌外ですから、年金制度の持続可能性など自分の守備範囲だけを満足させる内容になってしまうのです。

 それに加えて、個々の役所の組織の論理(=省益)も官僚の行動に大きく影響します。例えば、役所は民間企業と違って儲けやコストは関係ないので、獲得する予算や権限は大きいほど良い(自己満足+天下り先が増える)となります。だから無駄な予算だらけになるのです。

ちなみに、財務省に関しては様々な悪評や陰謀説が言われますが、現実の財務官僚はそんな悪人ではありません。ただ、財政健全化が組織の論理の根底にあり、また組織の行動原理が自分達の影響力の最大化なので、日本経済全体の足を引っ張っているように見えてしまうのです。

 

 以上からお分かりいただけると思いますが、日本を全体として良くする政策を官僚に期待するのは無理です。日本全体のことを考える立場にある総理や与党の政治家がまず全体的な政策の方向性を明確にして、それを踏まえて個別の政策を各省庁の官僚に作らせることが絶対に必要なのです。

 ちょうど石破総理は施政方針演説で“楽しい日本”を目指すと言いました。“楽しい日本”という言葉は故堺屋太一先生が考え出したのですが、この言葉にも通じる堺屋先生の最大の問題意識は、日本は官僚支配の構造から脱却しなくてはダメということでした。石破総理がそこまで理解してこの言葉を使い、また実際にそうする気があると期待したいですが。。。

 

岸 博幸(きし ひろゆき)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、RIZIN(格闘技団体)アドバイザー。専門分野は経営戦略、メディア/コンテンツ・ビジネス論、経済政策。元経産官僚、元総務大臣秘書官。元内閣官房参与。趣味はMMA、DT、VOLBEAT、NYK。

 

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