●更新日 08/26●


「もうここには来ないよ」


前回、離婚した元夫が自殺し、そのお墓を探して欲しいという依頼を受けた。
元夫の家族からは、「自殺の原因はお前だ」という理不尽な一言を突きつけられた依頼者。
そのため我々は元夫の家族には知られないようにお墓を探した。


市内の墓地をくまなく探す。
すると、元夫の家の墓と思われるものが発見することが出来た。


依頼者である中村さんに調査完了の旨を報告する。
「結論からいいます。お墓は見つかりました。元夫の名前もありました。場所をお教えしますが」
すると中村さんは
「有難うございます。お墓参りだけでも行きたいのですが、元夫の家族のことを考えると・・・できれば一緒に行って頂けると助かるのですが・・・」

我々はその申し出を快諾した。


後日、中村さんと対面する。



「有難うございます。今日はこの目にしっかりと彼を焼付け、この思いに決着をつけます」

車に乗り込み、お墓のある埼玉県某市へ向かう。
中村さんは車の中で、元夫についての想い出話を聞かせてくれた。



「最後に電話で話したのは、確か子供の運動会が見たいという話でした。子供に会わせるつもりは無かったんです。ですから断りました。まさかそれが最後になるとは思いませんでした」


車を走らせること約二時間、お墓のある場所に到着する。



「この先にあります」
「緊張します。言ってやりたいこともたくさんあるのに、それが彼のお墓だなんて複雑です」

いよいよ中村さんは元夫と久しぶりの対面を果たす。



「ここに彼が眠っているのですね」
「はい。右にある墓誌を見てください」



「・・・確かに名前がありますね・・彼は本当に亡くなったのですね・・・」

しばらくお墓を眺めた後、中村さんは持参した花を生けると、コーヒーとビールを取り出した。



「彼はコーヒーとビールが大好きだったんです。せめてこれを・・・」

その後、中村さんは携帯を取り出し、墓石に向かって画面を見せた。



「お子さんの写真ですか?」
「はい。こんな形でしか見せることはできませんが・・・」
「いいと思いますよ。きっと見てくれていますよ」

我々はここで席を外し、中村さんと彼を二人きりにした。
積もる話もあるだろう。
「5分でいいです。それで今までの思いに決着をつけますから」

5分後、再びお墓の前で合流した。



「どうですか?今までの思いに決着はつきましたか」
「はい。これ以上ここにいても辛いだけですから・・・」

そして、最後に彼女は
「色々あったけどありがとう。私は行くね。もうここには来ないよ」


神妙な面持ちでお墓に向かって告げ、我々はその場所を後にした。




    - vol.002 -  
 
  想い出探偵 file002  「離婚した元夫のお墓を探して欲しい」

依頼人 中村
 
 




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特捜班



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