●更新日 01/26●
近未来
201X年、私はある町の入り口にいた。
過去、自動車産業で賑わっていた町だ。
朽ち果てた橋梁でトンボが出迎えてくれた。
学校も工場も映画館も、息の根を止めていた。
人の気配をかすかに感じたので
しばらく歩いたが、とうとう人と出会うことは無かった。
行く手を阻む無数のバリケードと
建築途中で見放されたビル群が私の足に呪いをかける。
クルマに生かされてクルマに殺された小さな町工場。
私は低い声で『ウッ』と叫んでみた。
時計が逆回転を始める。
出迎えてくれたトンボは、死んでいた。
BOSS
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