●更新日 11/17●


日本科学未来館の元職員が語る、事業仕分けの理不尽


行政刷新会議による「事業仕分け」の是非をめぐって、様々な議論が展開されている。

スーパーコンピューター事業については、性能面での世界一の地位に日本がいなければならない必然性は何なのかという問いが立てられ、話題になった。一連の仕分けは日本を「亡国」へ導くものだという激しい反論がある一方で、個々の事業の無駄や問題点を指摘する声もある。

この問題について、日本科学未来館の元職員に取材を申し込んだ。同館も仕分けの対象であり、毛利衛館長は施設の存在意義を熱く語っていた。その結果は、予算の削減。これについて話を聞く予定だったが、仕分け事業の方向性に関する興味深い視点の提示があったので、その話題を紹介したい。





元職員が注目するのは、研究者の育成事業への影響である。科学研究費をはじめ、仕分けの対象には、研究資金に関わるものが目立つ。その中には、日本の研究の将来を担うであろう、若手の研究者を支援するための補助金や奨励金等も多い。この点については、「若手研究者の意欲を失わせる」、「研究者の海外流出を加速させる」といった意見がマスコミ報道にも見られる。

しかし、元職員が強調する点は、やや異なる。90年代後半、世界に通用し競争できる人材の増加を目的に、文部科学省は大学院教育の重点化を図ると共に、博士号を取得した人々の期限付き雇用を促進した。その結果、大学院に進学し博士号を取得する人々が続出。一方で大学等の専任職は限られ、博士号を取得後も就職先がないまま、アルバイトで食いつなぐ人々が激増した。





仕分けの対象となった研究資金には、かつての政府の失策で発生した人々への支援を目的としたものも多い。「「国策」の名の下に研究者を勝手に増やして、今度は予算削減。一部の人間の判断で人生を左右される側にとっては、たまったものじゃない。自民党も民主党も、研究者を育てる気はないんですよね」と元職員は批判する。

「研究費は生活保護じゃないって言うけど、ちゃんとした仕事を持った人が上から目線で語っても説得力ないですよ。現状を解決できる具体的な政策もないまま「無駄」扱いするのは、結局は切り捨てです」という。仕分けの担当者が、各々の事業の意義や歴史的背景をどれだけ理解しているのかということも、疑問だという。

無駄か否かという判定を、誰ならば適切にできるのか。この点について、もっと慎重な議論がなされるべきだったのかもしれない。




探偵T



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