●更新日 06/05●


不況に蠢く闇からの脱出〜夜逃げ屋の実態とは


不況不況と嘆かれるこのご時勢に… 人知れず活気付く業界があった。
俗に言う「夜逃げ屋」である。


抱え込んでしまったしがらみから開放し、0からの再出発をサポートするこの職業。漫画からテレビドラマ化、そして映画化された人気シリーズ「夜逃げ屋本舗」でその存在を知った方も多いはず。

今回、実際に夜逃げ屋を利用し新しい生活をスタートさせたというA子さん(仮名)31歳女性に夜逃げ屋利用の実体験について話を聞いてみた。



ーーまずは夜逃げすることになった経緯を簡単に教えて頂けますでしょうか。
よくテレビで“内縁の妻”という言葉を見かけると思うんですが、私も5年間内縁の妻をしていたんです。その内縁の夫というのでしょうか、彼が会社を不当解雇されてしまってから家に篭ってしまい、暴力を振るうようにもなってしまったので…


ーーいわゆるDVですね、警察やDVの相談機関は利用されなかったのですか?
長年一緒にいましたからもう家族みたいな感覚なんです…。警察沙汰にはしたくありませんし、本当に心から立ち直って欲しいと思っていますので。
私に全てを頼ってしまってるのが彼のためにも良くないと思い、いなくなろうと決心しました。


ーー彼が同居中で家に篭っているということは非常に困難な状況ではありませんでしたか?
はい。でも夜逃げ屋さんは電話をするとすぐに電気工事を装って見積もりに着てくれました。
1分もしないうちに見積もり金額が出たんですが、やはり普通の引越し業者と違うので8万円ちょっとしました。お金は前払いとのことだったのでその場で支払い、全てを夜逃げ屋さんに託しました。


ーーその後の段取りはどうでしたか?
必要な荷物とそれらのまとめ方の指示を頂き荷物をまとめる作業をしつつ、彼を家から出すアドバイスをもらいました。普段から近所のコンビニくらいには出かけていましたので、家の食料を減らしておくだけで家から出すことは出来ましたが…。20 分もせずに帰ってきてしまうんです。


ーーそれでも夜逃げが出来たというのは何か他の作戦を考えたのですか?
いいえ。その20分で全てを完了させてくれました(笑)
当日私はいつも仕事に出る時間に家を出ると夜逃げ屋さんと合流しました。
夕方に彼が出かける様子を見張り役の方がチェックしてトランシーバーで伝えると凄いスピードで5人くらいの人が飛び出してバケツリレーみたいに荷物を積み込みました。
トラック1台とハイエースのような車が1台あったのですが、トラックはダミーの車ということで別の方角に走らせたみたいです。
私は普通の目立たない乗用車に乗せられました。20分どころか15分もかからず全てが終わってしまったので私は呆然としてしまい、残された彼の事しか考えられず涙が止まりませんでした。


ーー映画やドラマのように張り紙や手紙を残したりはするのですか?
私は残したかったのですが、夜逃げ屋さんのアドバイスでやめました。
この状況ならメモを残さなくても意図が伝わるからだそうです。


ーーご実家や職場が知られていて新居が割り出されるのではないですか?
幸か不幸か私は両親とは仲が良くありませんので、彼は私の実家も知りません。実家がわかったところで両親が私の所在をわからないですし。職場は夜逃げ屋さんのアドバイスで辞めました。
不安はありますが、一応手に職があるので新しい土地でなんとか頑張っています。


ーー夜逃げ屋を利用してみて良かった点、困った点等ありますか?
やっぱり普通の引越しではなく夜逃げ屋さんにお願いしたのは正解だと思います。
自分では気づかない盲点等も親切に教えてくれましたし、情に流されずにすみました。
実際にお願いするまではドキドキしましたが、見積もりをお願いしてからはビックリするくらいのスピードで進んでいったので実際は荷物をまとめること以外何もすることが無かったというのも楽で良かったと思います。
困った事と言えば友達でしょうか。もともと友達が多いほうではなかったのですが、やはり彼と共通の友人なんかと連絡が取れなくなるのが寂しいですね。新しい携帯電話には前の電話帳データを入れてませんし。
もちろんそれくらいの覚悟が必要だと言われたので。やっぱり寂しいですね。本当の意味で一人ぼっちになって0から全てやり直しというのは、寂しいです…。





不況が落とす闇夜の中から逃げ出そうとする人は後を経たない。
このような状況が続く限り夜逃げ屋稼業は安泰といったところだろうか。

今回のA子さんと同様、逃げ出す者にも逃げ出される者にも消えない爪あとを残す夜逃げ。
多くの原因となっている経済の夜明けを願うばかりである。



浜田浜



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