その後、彼女はこのワンピースを処分することができず、今まで起こったすべてを劇場マネージャーに話し、 彼にそのワンピースをお寺にもっていってもらうことにした。

「これで、幽霊から開放される、そう思いました。 でも、そんな願いとは裏腹に幽霊は夢に侵入してくるのです。 気持ちがひどく滅入り、眠ることもできず、仕事も手につかない。 わたしは医者に処方箋を書いてもらい、睡眠薬を手に入れて、死ぬ覚悟を決めたのです」

 睡眠薬が致死量に満たなかったため、命に別状はなかったが、薬によって胃膜が荒れたことと、 神経性胃炎を同時に患ってそのまま入院生活を送るはめになったという。 リハビリしている今も体調は元通りにならない。それも当然で、今も彼女は霊に恐怖を感じているのだ。
 このままでは彼女は確実に呪い殺されると思った私は、そのワンピースを取りにいく決心をした。
 十分悩んだ。本の題材を考えれば、ここまでで十分だろう。 これ以上は探偵の調査能力を持ってしても無理だったと出版社に説明すればいい。
 しかし、私にその後の調査を決意させたのは、その踊り子の安否もあるが、 ワンピースに取り憑いた怨霊の正体への興味もあったからだ。