遺書を読んだ母親は東京の警察に電話したそうだ。遺体を発見した警察官の話によると、娘は首を吊った衝撃で舌を噛みちぎっていたらしい。
両親が娘の荷物を引き取りにきたときには、男はすでに部屋から逃げ出した後で、もぬけの殻。
その後、その男の行方は誰も探さなかった。 娘は最期まで男を愛していた。その男に裏切られた悲しみは計り知れないほどの怨念を生み、 絶命する寸前、愛しい男からもらったワンピースに怨霊となってのり移ったのだろう。 私はこの霊に強く導かれた気がして、すぐさま東京にいる部下に命じ、男の身元を洗った。 フルネーム、生年月日、前住所がわかっていれば簡単なことだ。 男は新宿区北新宿三丁目のマンションで年上の女と結婚していた。 私はワンピースのはいった宅急便を送り届け、この男が開封したのを見届けその場を立ち去った。 長い年月を経て娘の強力な怨念がその恨みの根源に辿りついた。 あなたの手にまちがってもこのワンピースが渡らないことを願う……。 |
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